ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「ちゃんと説明してくれるわよね、雅さん」
「大体の予想はついているだろ。俺は《悪魔学》の研究者であり、正真正銘の魔術師だ。――で、屋敷の住人は、俺が喚び出した天魔だ」
 眼鏡の奥の双眸を怜悧に輝かせ、雅があっさりと答えを弾き出す。
「そっ、オレたちは雅に召喚された悪魔。《真実の名》で呼ばれる時は、雅の忠実な騎士であり、下僕ってわけだ」
 操が妙にはしゃいだ口調で告げる。
「悪魔の《真実の名》は、それだけで効力を発する。魔術に長けた者が口にするだけで、一種の呪文と成り得る。だから、普段は俺が勝手につけた名で呼んでいる」
「それで、みんな日本名を持っているのね」
 納得したように冬子は頷いた。
 皆の外見は日本人離れしすぎている。
 なのに日本名を持っているのは、『本名を気軽に呼んではいけない』という、雅なりの配慮なのだろう。
「改めて、自己紹介を……。私は地獄の西界王。第十七将軍――火界王パイモンです」
 セイが洗練された仕種で冬子に向かって軽く頭を下げる。
「セイはスゴイ奴なんだぜ。昔は元素界を司る四界王の一人だったんだ。けど、何をトチ狂ったのか、ルシファー様についてヤハウェと対立したのさ。今はルシファー様の右腕だ」
「……『四界王』って、何よ?」
 冬子は猜疑の眼差しを雅に向けた。
 冬子は身を危険に晒されたのだ。様々な怪事の原因と共に、全てを知る権利があるはずだ。
 桔梗屋敷の住人が悪魔であれ、雅から語られる真実が突拍子もないものであれ、情報は公開されるべきだ。
 訳も解らずに悪魔に襲われるようなことは、二度と御免だった。
「この世における四大元素は、水・空気・地・火だ。地上に棲息する《地魔》の中でも、四大元素を表現した精霊のことを《精霊系地魔》と呼ぶ。水の眷属はアイダイン一族。空気はシルフ一族。地はノーム一族。そして、火はサラマンダー一族だ。それら一族の王が、俗に『四界王』と呼ばれる」
 いつもながらの素っ気ない口調で、雅が知識を披露する。
「じゃ、セイさんは火界王だから、サラマンダー一族の王だったのね」
 サラマンダーとは、先刻セイが出現させた、あの炎に包まれたトカゲたちのことだろう。
「一族を引き連れてルシファー様に加担したので、その役は疾うに解かれているけれどね。今は、ミカエルが私の抜けた穴を埋めている」
 セイは他人事のように淡々と述べる。
 空想上でしかないと思っていた大天使の名がサラリと出ることに、冬子は多少の違和感を感じた。
 しかし、彼らにとっては空想でも伝説でもなく、それが現実であるらしい。
「嫌な奴の名なんか出すなよ、セイ。――っと、オレは第十将軍フォーカロールだ」
 苦々しげに顔をしかめた後、操が思い出したように名乗り出る。
「わたくしは第四十将軍グレモリーですわ。操と同じく、地獄の公爵ですのよ」
「ついでに、ルシファー様の六副官リリスの妹。高貴な血筋のお姫様だ」
 木蓮の言葉に、操が注釈をつける。
 ――リリス。
 その名を聞いた瞬間、冬子の心臓は何故か大きく弾んだ。
 だが一瞬のことであり無論理由も解らない。
 ただ、自分の裡の『何か』が無意識に反応を示したようだった。
 リリス。
 イヴに先立つ最初の女性。
 アダムの最初の妻だったというのを何かの書物で読んだ。
 だが、それ以上のことは何も知らない。
 冬子は一度だけ弾んだ胸を片手で押さえ、困惑気味に小首を傾げた。
「みんな、悪魔なのね……。それで、碧くんも地獄の公爵なわけ?」
「あら、聡いですわね。確かに碧も公爵ですわ。《真実の名》は、セーレと言いますのよ」
 疲れたように疑問を口にすると、木蓮がパチパチパチと拍手をしながら応えた。
「なるほどね……。じゃあ、この人たちは?」
 ウヴァルとマルコシアスに視線を流す。
「わたしは地獄の公爵。第二十二将軍ウヴァルです。隣は、地獄の侯爵マルコシアスです」
 ウヴァルが笑顔で自分と隣の男を紹介する。
「オレは第六十九将軍だ」
 生真面目な表情でマルコシアスが頷く。
「マルコシアスは、ルシファー様でも一目置く史上最強の戦闘魔獣でもあります。ああ、わたしたちは雅さんに召喚されたわけではないですよ。わたしたちは七十二将でありますが、《創世記戦争》以前からのグレモリー様の配下でもあります」
「オレはグレモリー様の騎乗獣だった」
「わたしは今も昔もグレモリー様の従者です。まあ、わたしたちは、愛する主人の身を案じて勝手に地上に降り、この屋敷に居座っている――ということになりますな」
 ウヴァルが誇らしげに胸を張る。
 隣でマルコシアスも大きく頷いていた。
 どちらも木蓮に絶大なる敬意を抱いているようだ。
 日頃、銅像の真似などしているのは、彼らが雅に忠誠を誓っている悪魔ではないからなのだろう。



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2009.07.02 / Top↑
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