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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Mon
2009.07.06[08:51]
1.魔城



 大陸暦一二八六年・初秋――


 大陸の南端には、ロレーヌと呼ばれる肥沃な大地が存在していた。
 キール、イタール、カシミアの三国が『平和協定』を結び、外見上は平穏に大地を治めていたのである。
 約千二百年前――ロレーヌ地方は『ロレーヌ』という一つの国であり、初代ロレーヌ王の統治下にあった。
 王には三人の仲睦まじい王子が在り、王は玉座を明渡す際に非常に頭を悩ませたと伝えられている。
 悩んだ末に王が発案したのは、国領の分化であった。
 王は国を三つに分割し、それぞれを三人の王子に譲渡した。

 キール、イタール、カシミアの誕生である。

 三国の兄弟王は、決して互いの国を攻めぬこと、一国に災厄が降りかかれば必ず助け合うことを誓い、『平和協定』を締結した。
 兄弟王の取り決めた『平和協定』は、三国の緊密な結びつきにより、永き間破られることはなかった。
 先年、カシミア王ラパスが、キールに奇襲をかけるまでは……。
 史上初、ラパスは公に『平和協定』を破棄したのである。
 そして彼は、キール・イタールを制圧し、見事ロレーヌ三国を掌中にした。
 自国の王が偉業を成し遂げたことに、カシミア国民は沸き立っていた。
 それが一方的な武力を駆使した結果であっても、ロレーヌ再統一という祭りに、人々はかつてない興奮と熱狂振りを発揮していた。
 その影に潜む、血に塗れた殺戮や略奪。家人・知人・友人、家や町――そして、国を奪い取られたキール・イタール人の怨嗟の念を、無理矢理心の奥底に封印してしまおうというように……。
 カシミアの人々は、自国の発展と王の栄華に酔いしれていた。
 王の住まうアリトラの白亜宮が、熱狂の中枢であるのは、当然の理であった。


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