FC2ブログ
管理画面
ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Thu
2009.07.09[08:48]
     *


 カシミア王ラパスに、マバリタの叛乱が伝達されたのは、叛乱勃発から三日後のことだった。
「旧キール国内マバリタで、我が軍に対する叛乱が起きたようですよ」
 緊張感の欠けた声音で告げたのは、親衛隊長ルシティナだ。
「……予想より幾分遅かったな」
 ラパスは軽く片方の眉を動かしただけで、格別驚いた様子も見せなかった。
 その顔には、冷ややかな笑みさえ浮かんでいる。
「その他の地域でも、我が軍に――陛下に対する乱が起こっているようです」
「それは早々に鎮めないとな。キールに同調してイタールにまで乱を起こされると、困る」
 クックッと愉しそうな笑い声を立て、ラパスはルシティナを見遣った。
「マバリタの東部――カノヴァ砦にて、我が軍は籠城を始めたそうですよ」
 半ば呆れた表情でラパスを見返し、ルシティナは肩を聳やかした。
「籠城、か……。余の嫌いな戦法だな。先の大戦でキール王が行ったことを、余の軍が真似てどうする? 愚かだな」
「約二千人が籠城していることになりますね」
「相手は?」
「三千ほどだとか……? ああ、カノヴァ砦から応援の要請が届いていますが、誰に赴いてもらいますか?」
「街の民相手に何をしているのやら」
 ラパスの唇から短い嘆息が洩れる。
「近隣の街から陛下に不満を持つ民らがマバリタに集結し始めているとも……。如何がなさいますか、陛下」
「マバリタは、アリトラの東。キール領内といえども近いな」
 ラパスは視線をルシティナに据え、余裕の微笑みを浮かべた。
 不敵な笑みに、ルシティナが怪訝そうに顔をしかめる。
「まさか……陛下――」
「余が出向く」
 簡潔にラパスは断言した。
 ルシティナの双眸が咎めるように大きく見開かれる。
「たかが民の乱如きに、親征なさると言うのですか?」
「そういうことだな。無論、おまえもだ。それから、アイラも、な」
「陛下……? アイラ殿下をキールの民衆の眼前に曝すおつもりですか?」
 ルシティナの問いにラパスは応じなかった。
 唇の両端を吊り上げて微笑むだけだ。
 残忍で冷血な微笑――魔王の仮面がラパスの顔に張り付いていた……。
「明日の朝までに、一万の王師を編成しておけ。整い次第、出征する」
「……御意に」
「マバリタに不穏分子が集いつつあるというのなら、好都合だ」
 ラパスは愉悦の笑みを浮かべたまま、腰に携えたザハークの柄に手を伸ばした。
 慣れた手付きで、ザハークを鞘から抜き出す。
 人の血を浴びる度に黒く色づき、禍々しく輝く刀剣は、ラパスが頭上高く翳すと光を発した。
「余を阻もうとする者は、誰であろうと赦さぬ。マバリタは――見せしめだ」
 ラパスの言葉に呼応するように、ザハークが一際妖異な黒い光を放った。


     *



 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト



 
Category * 紅蓮の大地
編集[管理者用] このページのトップへ

 

 
Copyright © 2019 言葉のさざなみ, all rights reserved.