ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 旧キール国内は、僅か数日間で俄かに騒々しくなった。
 マバリタに続けとばかりに、各地でカシミア軍に対する反抗が繰り広げ始められたのである。
 突然の叛乱にカシミア軍は混乱し、次いで激怒した。
 支配者に歯向かう愚行を鎮めるために、武力行使が成されたのだ。
 僅か二日の間に、およそ五千人のキール人の血が流された。
 それでも、一度起こった叛乱の波は容易く引くことはなく、根強く押し寄せ続けていた。

 旧キール各処で勃発した動乱の引き金――マバリタに幾千ものカシミア国旗が翻ったのは、騒動開始から一週間目のことであった。

 カシミア王ラパス直属の王師。

 黒地に金の刺繍で双頭の竜と紅蝶が描かれたカシミアの紋章。

 ロレーヌ戦争終結から、幾ばくも時は流れていない。
 人々は見慣れた恐怖の証に震え、慄いた。
 忘れようにも忘れられない、悪魔の黒衣集団。
 漆黒のカシミア軍の中に一際巨大な旗がはためいているのを目撃して、人々は更なる恐怖に襲われた。
 慄然とした。
 王旗――カシミア王ラパスの象徴。
 誰もが我が目を疑った。
 だが、猜疑しつつも、暗澹たる不安と恐怖を払拭できずにいた。
 どんなに錯覚だと思い込もうとしても、現実は現実でしかない。
 翻る王旗は、紛れもなくラパスの再来を大々的に示していた。

 マバリタの街は、瞬く間に黒一色に染め上げられた。
 重く閉ざされていたカノヴァ砦の門が、援軍の到着に嬉々として開かれる。

 キールの大地に、魔王が再臨する瞬間だった――


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2009.07.09 / Top↑
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