ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 マバタリの門が開かれたのは、正午を少し廻った時のことだった。
 カシミア兵の先導により、門外に群がっていた人々が街へと引き入れられる。その際、当然のことながら武器類はカシミア兵によって没収された。
 暗黒の騎士団で埋め尽くされた街を、人々は憔悴しきった表情で歩いた。
 行き着いた場所は、カノヴァ砦の傍らにある巨大な広場だった。
 戦の難を逃れた約三千の民が、有無を問わさず一所に集められたのである。
 広場の中央には、木で造られた高い物見台のようなものが設えてあった。
 台の上では数人のカシミア兵が動き回り、火鉢のようなものに火をくべている。
 その光景を目にして、人々は低く騒めきあった。

 ――処刑が行われる。

 誰もが直感的にそう察した。
 今回の叛乱の首謀者か、それに近い存在が、見せしめのために公開処刑されるのだ。
 不安ばかりが募る中、カシミア兵が銅鑼を叩き鳴らす。
 間を空けずに、広場の前通りに位置する砦の門が重々しい軋みをあげて開いた。
 そこから、黒ずくめの一団が颯爽と姿を現す。
 自然と人々の視線はそちらに集中した。
 死神のような一団が広場に近づくにつれ、緊迫した雰囲気が辺りに張り詰める。
 一団が広場に到着する。
 太陽の光を浴びて、馬上の一つで何かが眩く輝いた。
「――王子!」
 大勢の中で、誰かが衝撃的な事実に気づく。
 その声は、思いの外高く周囲に響き渡った。
 人々の視線が、馬上で光り輝くもの――銀の髪に寄せられる。
「王子っ!」
「アイラ殿下だっ!!」
 人々の間で爆発的などよめきが巻き起こる。
 噂は真実だった――だが、この場に現れたということは、その王子自身が処刑されるということだろう。
 人々は驚愕し、悲嘆した。
 そして最後に、激怒へと感情を変化させた。
 王家最後の生き残りとなった愛すべき王子を、ラパスは民の眼前で引き裂こうとしているのだ。
 赦し難い不遜。
 赦し難い屈辱だった……。
 怒涛のような民の悲鳴と非難を抑えつけるように、再び銅鑼の音が空気を揺るがす。
 それでも民の叫びは収まらなかった。
 民の悲痛な叫びが波が引くようにスッと止まったのは、処刑台の上に王子――ギルバード・アイラの姿が出現した時だった。
 王子の両手足には、鉛の枷が填められている――カシミアの虜囚であることの証明だ。
 だが、当の王子は恥じた様子もなく、しっかりと顔を上げていた。
 青い双眸は、誇り高く、毅然と前を見据えていた。


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2009.07.09 / Top↑
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