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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Sat
2009.07.11[10:08]
 したためた書をドレスの胸に潜ませ、ファリファナはアイラの部屋へ戻った。
「シザハン様、これをルーク・ベイにお渡し下さいませ」
 ファリファナはすぐに手紙を取り出し、シザハンへと差し出した。
 シザハンは、ほんの短い間、戸惑ったようにファリファナの顔を眺めた。ルーク・ベイとファリファナとの接点が見出せなかったのだろう。だが彼は、それについては追及せずに手紙を受け取った。
「……解りました。ですが、これは?」
「白亜宮の――この宮殿の見取り図ですわ」
 シザハンの問いに、ファリファナは屈託なく答える。
 シザハンが驚愕に目を見開き、手紙に視線を落とした。
「わたくし、ルフィカスタ伯爵としては、陛下に信頼されていますのよ」
「その信頼を……あなたは失いますよ?」
 シザハンの眼差しがファリファナに移される。それは、確認を促すものだった。
「ええ。売国奴と罵られる覚悟はできていますわ。アイラ様を愛した、その瞬間から――」
 ファリファナは心からの笑みを浮かべる。
 言葉に――心に偽りはなかった。
「アイラ様はキールへお帰りになるべきですわ」
 はっきりとした口調でファリファナは告げた。
 シザハンが静かに瞼を伏せ、首肯する。
「解りました。確かに、ルーク・ベイにお届けします」
 決心したように言葉を紡ぎ、彼は書を胸元へと隠した。アイラの瞳よりも明るいシザハンの青い双眸が、ファリファナを見つめる。
 ふと、シザハンの手がファリファナに向け伸ばされた。
 額にシザハンの指が触れる。
「アイラ殿下にも、アーナス王女と同じくエルロラの加護がおありです」
 柔らかく告げるシザハンの言葉に、ファリファナは小首を傾げた。
 アイラにもエルロラ神の加護がある――それは一体、何を示唆しているのだろうか?
「いずれ解る刻がくるでしょう」
 シザハンは意味深に微笑む。
 額に添えられたシザハンの指が、軽く動いた。
 温かい光がシザハンの指を覆っている。彼は、ファリファナの額に精霊文字を描いているようだった。
「アイラ殿下とあなたに、エルロラの光が降り注ぎますように――」
 祈りの言葉を捧げ、会釈すると、シザハンは静かに去ってゆく。
 シザハンの姿が消えた扉に向かって、ファリファナは深く頭を下げていた。
 唇を噛み締めながら、胸中で切に願う。

 ――どうか、アイラ様の未来に光が射しますように……。


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