ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「キールの王子が逃げたぞっ!」
「逃がすな! 宮殿から出してはならぬっ!」
 狼狽したカシミア兵の叫びが、回廊に木霊した。
 白亜宮二階の中央は、巨大な広間のように回廊が膨らんでいる。
 そこが、最大の戦場――混戦地帯だった。
『王子が逃げた――』
 その報告に、カシミア兵は恟然とし、キール兵は狂喜乱舞した。
 数では劣るキール軍に希望の光が射す。
 人々の顔には、喜色と気力が満ち溢れた。
「アイラ様……!」
 カシミア兵の焦燥の叫びに、ルーク・ベイは一瞬我が耳を疑った。
 ――が、それはほんの僅かな間のことだった。
 兵士たちで溢れる回廊。
 人々の隙間を縫うようにして、銀の輝きが見え隠れしている。
 血飛沫の中を、長い銀の髪が舞っていた。
 両手に持つ細身の剣を自由自在に操る、華麗な姿。
『舞踏のような剣技』と称賛される、身の軽やかさを活かした独特の剣捌き。
 間違いなく、捜し求めていた王子――アイラの姿が近くにあった。
「パゼッタ将軍!」
「ルーク・ベイ!」
 ルークは、傍にいるパゼッタに素早く視線を流した。
 パゼッタもアイラに気づいたらしく、ほぼ同時に声を張り上げた。
 パゼッタは、刃渡りニメートルもある大剣を一振りし、目の前の敵を蹴散らしていた。
 ルークも彼に倣い、手近な敵に強烈な一撃を見舞った。
 群がる敵を互いに斃しながらアイラの姿を目指し、突き進む。
 シザハンは、逃走路確保のために城壁の外で待機している。
 フェノナイゼは、魔術師団を引き連れて別の箇所を攻めていた。
 今、この場にいるルークとパゼッタが、アイラを死守しなければならないのだ。
 否が応にも二人の心は急いた。
 一刻も早くアイラと合流し、彼を護るのだ。
 その想いが、二人の闘争心を燃え上がらせた。
 王子は、もう間近に迫っている。

 
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2009.07.11 / Top↑
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