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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Sun
2009.07.12[00:27]
 カシャンッッッ!
 激しく剣と剣がぶつかり合う。
「ラパス! 貴様だけは赦さないっ!」
 右のレイピアをザハークに叩き付けながら、アイラは叫んだ。
「片手では、余の力には勝てぬぞ」
 冷静に言葉を紡ぎ、ラパスがザハークを強く押し出した。
「――くっ……!」
 アイラは即座に後方へ飛び去った。
 ラパスの言っていることは正しい。片手では幾ら力を込めても、ラパスに弾き返されるだけだ。
 元より病魔に身を蝕まれている。剣を振るい、立っていることさえ不思議な状態だった。
「病の身に、双剣は辛いだろう」
 薄く笑いながらラパスが詰め寄ってくる。
 ザハークの鋭利な刃が、下から上へとはね上がった。
「ならば、棄てるまで――!」
 アイラは瞬時に左のレイピアを床に放り出していた。
 右に残った剣を水平に倒し、両手で支えてザハークの攻撃に耐える。
 刃がぶつかり合った瞬間、アイラの両手に痺れるような痛みが走った。
「つっ……!」
 渾身の力を注いで、ザハークが持ち上げられるのを阻止する。
 自然と全身に力が入った。
 胸の奥――病魔が根城にした肺が、痛みに締めつけられる。
 きりきりとした激痛が、肺から他の内臓に伝播した。
 最早、肉体は衝撃に耐えうるほどの余力を残してはいないのだ。
「どうした、アイラ?」
 からかうような眼差しでアイラを見つめ、ラパスが手をはね上げる。
 強引にレイピアが押し上げられ、ザハークの刃が頬を裂く。
「ちっ……!」
 舌打ちし、アイラはザハークの軌跡とは反対方向へ身を滑らせた。
 鋭敏に横に移動しつつ、ラパスの脇腹目がけてレイピアを水平に薙ぎる。
 ラパスは間一髪のところでそれを躱わし、軽く後方へ飛び去った。
「愚昧な妹と同じ運命を辿るか」
 ラパスの顔からは笑みが絶えない。明らかに、アイラを弄んでいた。
「妹を侮辱するなっ!」
 床を蹴って身を翻し、アイラはラパスに躍りかかった。
 長い銀の髪がアイラの動きに合わせ靡く。
「ラパスッッ!」
 柄を両手で掴み、アイラは空を断つ勢いで打ち下ろした。
 高い金属音が響く。
 ザハークがアイラの攻撃を受け止めたのだ。
「今更、余を斃してどうなる? 既におまえの故国は滅びているのだぞ。余を斃し、英雄にでもなるつもりか?」
 剣と剣を交差させたまま、二人は対峙した。
 交錯した刃の隙間で、二人の視線が絡まる。
 アイラの憎悪と憤怒の相俟った蒼い瞳。
 ラパスの冷たい闇の瞳。
 互いに目を離せなかった。
「英雄になる気などない! 私は貴様を討ちたいだけだ! 貴様の殺戮の餌食となった幾万の民の恨み、知るがいい! 地獄に舞い戻ることだけが――貴様に赦された贖いだ!」
 アイラは病む肉体を酷使して腕に力を込める。
 全身が悲鳴をあげたが構わなかった。
「……その身体では、長くは保つまい。すぐに終わらせてやろう」
 ラパスの黒曜石の瞳が凍て付くような冷光を発する。
「兄妹揃って、余の前に跪くがいい。――ザハーク!」
 ラパスが神の剣に呼びかける。
 応じるように、ザハークの刀身が妖異な輝きを帯び始めた。
 漆黒の光源。
 光であるはずなのに、それは闇そのものだった。
 ザハークは、闇の女神シリアの分身だ。
 暗黒を司れるのも至極当然の理。魔王と称されるラパスには似合いの武器だ。
 黒い光がザハークから溢れ出す。
 転瞬、凝縮した闇のような塊が一気に飛散した。
「――――!?」
 アイラの身体が目に見えぬ強い力で吹き飛ばされる。
 全身を黒い光が包み込んでいた。
 ザハークから放たれた凶悪な闇が、アイラの身体に圧力をかけた。



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