ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「――アイラ様……?」
 シザハンの魔術で、既にアリトラから遠く離れた地に逃げ延びていたファリファナは、突如として胸を襲った痛みに歩を止めた。
 首が自然とアリトラの方角を振り返る。
「どうしました?」
 シザハンとルークが立ち止まり、怪訝そうにファリファナを見つめる。
「解りません……。ただ、胸が苦しいのです」
 力なく首を横に振り、片手で胸を抑える。
「どうしてかしら? アイラ様は、必ず迎えに来て下さると約束してくれましたのに……。春には、キールで再会できますのに――」
 鼓動に合わせて、鋭い痛みがファリファナの胸を打つ。
「哀しいはずなんてありませんのに……何故、わたくしは泣いているのかしら?」
 いつの間にか、ファリファナの双眸から涙が溢れ出していた。
 流れ落ちる涙は、留まることを知らぬように滂沱と化す。
「わたくし、おかしいですわね、アイラ様」
 彼女に応える声はない。
 ファリファナは長いことその場に立ち竦み、涙で濡れた眼差しでアリトラを見つめ続けた。


     *


 旧キール軍によるアリトラの白亜宮襲撃は、僅か一日で鎮静化した。
 三日後には、国王ラパスの名による『叛乱鎮圧』の公布がなされ、捕らえられたキール兵らが速やかに処刑された。
 将軍パゼッタが断頭台に処され、その首は副宰相レンボスの首と共に城門に晒された……。
 キールの民は、ラパスの凄惨な処罰に戦々恐々とすることになる。

 だが、人々の渇望する情報――第二王子ギルバード・アイラの生死については、公式な発表は一切なされなかった――



     「7.紅蝶乱舞」へ続く



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2009.07.12 / Top↑
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