FC2ブログ
管理画面
ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Mon
2009.07.13[00:18]
「――じゃ、何だよ。ユイは十年前の約束のために、呪い殺されるって言うのかよ?」
 佐々木浩二から全てを聞き終え、鷹野透は不機嫌に言葉を吐き出した。
 佐々木が語った真実とやらは、透の理解の範疇を超えている。
 ユイや佐々木の故郷に《首吊り神社》と呼ばれる呪われた場所があって、そこで同級生である堀田慎が自殺した。
 それに先立ちユイは堀田慎に『わたしのことが好きだったら、死んでみせて。あなたが死んだら、わたしも死んであげる』と約束したのだという。
《首吊り神社》で自殺した者の魂は成仏することなく、怨念と化し、その場に縛り付けられる――
 そんな胡散臭い伝承の残る神社が先月解体された。
 故に、堀田慎の怨霊は解き放たれ、ユイに約束を果たさせるためだけに、この東京へやって来た。
 だから、ユイは堀田慎に殺される。
 佐々木の話を要約すると、そういうことなる。
 到底信じられない話だった。
 ユイの《種恐怖症》が、堀田慎の遺体に群がる虫に起因するという部分は納得できる。
 だが、その後の《呪い》云々の話は俄には信じられない。
 信憑性も真実味も皆無だ。
「君が信じようが信じまいが、僕には関係ないけど……。僕ら地元の人間は信じているんだ。だがら、ユイちゃんは自分の裡に根付いた恐怖を誤魔化すために、あの時の記憶を無意識に封印してしまったんだよ」
 佐々木は青ざめた顔で言い添えた。
「いつか訪れる《約束の日》を畏れてね――」
「バカバカしい」
 透は鼻白んだ。
 あまりにも突飛すぎて、あまりにも滑稽な作り話だ。
「オレは信じてみる価値はあると思うけどね。ユイちゃんが記憶から削除してしまうほど畏れた過去なんだ。頭から嘘だと決めつけることはないと思うよ」
 木戸が諭すように透を見つめる。
「明日……僕たちが十年前に慎を見つけた日なんだ。そう、僕らにとっては慎の命日なんだよ――」
 佐々木の言葉に同調するように、店のアンティーク時計が、ボーン、ボーンと午前零時を告げる鐘を鳴らした。
「おまえ、何、言って――」
「慎がユイちゃんを迎えに来る」
 佐々木の声には暗鬱な影が纏わりついているように感じられた。
「何、バカなこと言ってるんだよ」
 透は佐々木の言葉を否定しながらも、制服のポケットから素早く携帯電話を取り出していた。
 直ぐさま、ユイのケータイへ電話をかける。
 ……トゥルルルル……トゥルルルル……。
 一回、二回、三回、四回………………十回……。
 何度コールしてもユイは出ない。
 留守電に切り替わる様子もなかった。
「――くそっ、何で出ないんだよっ!?」
 透は舌打ちを鳴らした。
 言い表しようのない不安と焦燥が胸に芽生える。
 佐々木から聞いたばかりのユイの過去が、不吉な妄想の翼を広げた。
「……悪い、木戸、佐々木! オレ、帰るわ!」
 短く告げ、透は敏捷に身を翻した。
 店長には後で謝罪しよう。
 とにかく今は、何よりもユイの安否を確認したい。
 ――ユイ……ユイ!
 透は、心の中で何度も何度も恋人の名を呼びながら、バイクの置いてある駐車場まで疾駆した。



 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト



 
テーマ * 短編小説 ジャンル * 小説・文学
編集[管理者用] このページのトップへ

 

 
Copyright © 2019 言葉のさざなみ, all rights reserved.