ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「ユイッ!」
 透は、マンションへ辿り着くなり、乱暴にドアを開け、一目散にリビングを目指した。
「――ユイ、いるのかっ!?」
 リビングのドアを勢いよく開け放つ。
 リビングの照明は煌々と灯っていた。
 床に横たわっているユイの姿を発見して、透は僅かに安堵した。
 どうやら、居眠りをしているらしい。
 電話に出なかったのも、そのせいだろう。
 透はホッと胸を撫で下ろし、ゆっくりとリビングに足を踏み入れた。
「――あれ?」
 不意に、透はキッチンにある冷蔵庫のドアが開けっ放しになっている事実に気がついた。
 怪訝に思いながらも、視線をリビングへと戻す。
 すると、テーブルの上に綺麗に平らげられた西瓜の皮を発見した。
「何だよ……。スイカ、食べられるんじゃねーか」
 透は軽笑しながら、床に寝転がっているユイへ歩み寄った。
 膝を折り、俯き加減のユイの顔を覗き込む。
 長い黒髪が邪魔をして、顔はよく見えなかった。
「こんな所で寝てると、風邪ひくぞ、ユイ。――ユイ?」
 ユイの肩を揺すってみて、ふと透は眉をひそめた。
 ――冷たい。
「……ユイ? オイ、ユイッッ!?」
 慌ててユイの肩を掴み、一気に身体を仰向けにさせる。
 ゴロン。
 ユイの身体は力なく透の意に従った。
 ボロッ……。
 ボロ、ボロ、ボロッ……。
 ユイの口から溢れ出た黒い何かが、物凄い勢いで床に散らばる。
「うっ、うわぁぁっっ!」
 透は咄嗟にユイから手を離していた。
 ユイの顔面は生気を失い――蒼白だった。
 両眼はギョロリと見開かれ、白目を剥いていた。
 そして、大きく開いた口からは夥しい量の黒き種が溢れていた。
 とても西瓜半個分の種の量だとは考えられない。
 種の水溜まりが余裕で出来るほどだ……。
「な、なっ、何だよ、コレッッッ!?」
 全身が総毛立つ。
 急激に吐き気を催した。
 ユイの口から零れ落ちた種は、虫の大群のように見える。
 初めて『種が怖い』と怯えるユイの心理が解った。
「うっ……うえっ……!」
 透は嘔吐を堪えるように、片手で喉を掴んだ。
 ――透、約束よ。
 フッと、死んでいるはずのユイの声が耳元で囁く。
 ――わたしが死んだら、一緒に死んでくれるのよね?
 心の奥底から得体の知れない恐怖が迫り上がってくる。
 ――約束よ。
 冷たい手が頬を撫でる。
 透は、反射的に見えない《何か》を両手で突き飛ばしていた。
 ――約束よ、透。愛してるわ。

「ユ、ユイ……」
 恐怖と戦慄に身体が竦む。
 身動きが取れない。
 焦燥に血走った透の両眼に、半透明のユイの姿が刻印された――



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2009.07.13 / Top↑
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