ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「この世に戻った母は、榊の家が莫大な財産を抱える資産家であることを利用して、聖華学園を建てたのよ。勿論、封印の在り処を人目から隠すためにね。人間としての生活を取り戻した母は、父と結婚し、三人の子供と平和な暮らしを送ったわ。封印は、全く崩れる気配を見せなかったのよ。三人の子供もそれぞれ結婚し、母は余生を穏やかに過ごすはずだった――だけど、十七年前、予期せずして封印が崩れたのよ」
 桐子の唇が微妙に震えを帯びる。
 彼女はそれを無理矢理抑えるかのように、きつく唇を噛み締めるのだ。
「扉が開き、魔物たちがこの世に這い出てきたわ。もちろん境王も。彼は、母を必死に捜した。再び《鏡月魔境》へ連れて行きたかったのでしょうね。……時の流れというのは、残酷なものね。その時、境王は、五十年前と変わらず気高く美しい青年のまま。でも、母は年老いていたわ……。境王は解らなかったのよ。老いた母を自分の愛する《総子》だと、解らなかったのよ。あんなに愛し合った大切な人なのに……。皮肉なものね……彼は、自分の頭の中の若く美しい総子を捜し求めていたのよ。彼が目を付けたのは私だったわ。私は母の若い頃に似ていたから。今の美人と同じく、攫われようとしていたの。それに気付いた母は《鏡月魔境》へ赴き、境王がイメージする若かりし頃の自分の映像を自分自身に被せたのよ。境王は、鋭い感覚で総子が魔境へいることを悟り、私を連れたまま自分の世界へと戻った。そして、二人は対峙し、母が勝ったわ。母は自分の持てる全ての力を駆使して、永久凍結の《封魔氷》の中に境王を閉じ込めたの。同時に、母も生命を失ったわ。私は、母の遺体を抱えて何とか魔境を脱出し、扉を封印したのよ――」
「……ええ。似たようなことは、西野先生からも聞いています。《封魔氷》に封印されているから、境王の本体はこちら側に出てこれないのだと。ですが、それの何処に零治が絡んでくるというのですか?」
 美人は、零治と境王との関わりが出てこないことを指摘する。
 彼が、今一番知りたいのは、《それ》なのだ。
 大切な零治に関することだ。
「《封魔氷》に封印されたのは、境王の肉体だけなのよ。魂は、別のところに封じられたの」
「…………?」
「母が《封魔氷》に境王を封印する寸前、境王の巫女が彼の魂だけを先に抜き取ったのよ。巫女は、王の魂を人間界へと持って逃げたわ」
「まさか――」
 そこまで聞けば、美人には結末が読めてしまった。
「ええ。巫女は、何としても境王を護りたかったのよ。私の友人・曽父江依子のお腹には臨月を迎えた赤ちゃんがいたわ。巫女は、依子のお腹の中の子に境王の魂を封印したの。隠したのよ。そうして生まれてきたのが――零治くんよ。零治くんの裡には、ずっと……ずっと境王が眠っていたのよ」



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2009.07.20 / Top↑
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