ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
     *


『ビジン……ビジン!』
 誰かが呼んでいる。
『ビジン』
 誰だろう?
 懐かしさを感じさせる愛しい響き。
『ビジン』
 小さな子供が、自分を手招きしている。
『零治!』
 大好きな零治だ。
 幼い零治は、あどけなく笑っている。
『見て、ビジン』
 零治は両の掌を地面へ向けた。
 その瞬間、地面に無造作に転がっていた小石が数個、音も立てずにスーッと宙へ浮かび上がったのである。
『うわぁ……!』
 自分はその光景に見惚れていた。
 自分以外に《力》を持っている人間に出逢ったのは初めてだった。
 しかも、相手は大好きな零治だ。
 彼に自分と同じ《力》が備わっていたことが、とてつもなく嬉しい。
 それだけで、二人は一つになれたような気がしたからだ。
 零治がパチンと指を鳴らすと、小石は瞬く間に粉々に砕け散った。
『僕にもビジンと同じ《力》があるんだよ』
『凄いね、零治』
『僕らは一緒なんだよ、ビジン』
『うん。一緒だね!』
 零治と自分は、顔を見合わせてクスクス笑った。
 零治と一緒だという事実が、心を軽快にさせる。
『二人だけの秘密だよ』
 ニッコリ微笑む零治。
 どこか悪戯めいた笑みだった。


 不意に、映像は途絶えた。
 暗闇の中に、幼い零治の微笑みだけが残像のように浮かぶ。
 それは、頭の片隅で風化されたはずの記憶。
 何故なら零治のその魅惑的な《力》は、一週間と経たないうちに綺麗に消え去ってしまったからだ。
 今、思えば――零治に《力》が現れたことは何の不思議もない。
 体内に《彼》を宿していた零治なら――
 その稀有な力は彼のものだったのだから。
 そう。片鱗はあったのだ。
 彼――境王の。


     *


 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK

ブログパーツ
スポンサーサイト
2009.07.20 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。