ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
 両親が結婚したのは、父の忍が三十三歳、サラが二十一歳の時だったと聞いている。
 サラが十八歳の時、忍の経営するモデルクラブに移籍してきたことが契機だった。
 プラチナブロンドと翡翠色の双眸を持つ、美しい英国少女。
 忍は一目逢った瞬間、サラに強く惹かれたのだという。
 二十代前半まで自身もモデルを生業としていた忍は、サラの裡に烈々と輝く魂を――モデルとしての素質を見出し、後に個人的にも惹かれてゆく。
 サラは己れの美貌と才幹、そして忍からの惜しみない援助を糧に、瞬く間にトップモデルの座に登り詰めた。
 デザイナーズブランドのマヌカン、宝飾品や化粧品・香水のイメージモデルなど、超一流と名のつく様々な仕事が彼女の元に流れ込んできた。
 彼女は若くして人々からの称讃と支持を得、地位や名誉や栄光を一手に握ったのだ。
 二十一歳の時、サラは忍の子供を身籠もる。
 それを機に二人は結婚。
 しかし、それさえもサラの計算――己れの地位を揺るぎないものとするための策略だったのだという。
 彼女がトップモデルの座を維持してゆくためには、まだ確固たる後ろ盾が必要だったのだ。
 田端忍という業界最大手のモデルクラブのオーナーが。
 サラにとって忍はモデル界で這い上がってゆくための道具でしかなかったのだ。
 二人の間に愛情はなかった。
 忍からサラへの一方通行の想いは存在したが、その逆は一時として有り得なかったのだ。
 樹里を出産した時、サラは忍に残酷な告白をしたのだという。
『子供なんて産みたくなかった。あなたを繋ぎ止めておくために、仕方なく産んだのよ』
 それが彼女の言い分だった。
 そこで初めてサラに利用されていたことを悟った忍は、妻の自分に対する愛情が全て偽りだったことを忘れるように仕事に精励した。
 一方サラは、夫が自分に興味を示さなくなったことを『これ幸い』と、若い男性モデルを取っ替え引っ替えし、恋愛に事欠くことがなかった。
 三十歳を目前にして、サラは独立。
 忍への当てつけのように新たなモデルクラブを設立した。
 以後、二人の仲はますます疎遠になり――今に至る。




← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト
2009.05.27 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。