ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 序



 怖い。
 眠るのが怖い。
 闇が全てを覆い尽くすから。
 闇が堕ちてくる――血の匂いを漂わせる闇だ。
 自分を喰い荒らす忌まわしき闇……。

 ――眠い。
 だが、眠ってはいけない。

 彼は、夢うつつの状態で己に言い聞かせた。
 眠れば、悪夢を視てしまう。夢に引きずり込まれ、苛まれる。
 囚われ人となることは間違いない。
 
 眠る度に闇に堕ちてゆく。

 心の裡を闇が巣くっていた。
 身体中の細胞を一つ一つ蝕んでゆくような恐ろしい闇だ。

 彼は睡魔と闘いながら、血の闇に怯えるように身を震わせた。

 己の狂気を膨らませる危険な闇――
 これ以上、身を浸してはならない。取り込まれてはならない。

 だが、彼には闇から逃れるための術がなかった。
 翔ぶための翼がなかった。
 翼は無惨にも引き千切られ、既に背から消失している……。

 闇は、いつか完全に彼を狂わせるだろう。
 そうなってはいけないのだ。
 もしそうなれば、今度こそ狂気の世界から抜け出せなくなる。蟻地獄のように……。

 ――眠ってはいけない。

 必死に自分を戒める。
 しかし、彼の意に反するように瞼が重くなり、脳は睡眠を欲する。

 視界が狭まる――閉ざされる。
 微睡みが誘う。

 ――もうすぐ僕は十六歳になる……。

 眠りに堕ちる寸前、彼は朧気にそう思った。
 闇が降りてくる――




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2009.07.21 / Top↑
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