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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Thu
2009.05.28[23:14]
     *
 
 二人の級友から鋭い非難の眼差しを浴びせられて、園田充はわざとらしすぎるほどわざとらしい咳払いをした。
 つい先ほど、恋人である由香里は『この埋め合わせは必ずしてね』と言い残し、充をポルシェから追い出したのである。
 充は去り行くテールランプをしばし茫然と眺めていた。
 それから意を決して街灯へ歩み寄ったのだが、そこに佇む田端樹里と貴籐水柯から向けられたのは冷ややかな眼差しだけだった。
「いい加減、その白い目やめてくれないかな」
 充は、無言で自分を睨めつけている二人を交互に見遣った。
 樹里と水柯の顔には、呆れと蔑みの色が濃く浮き出ている。
「制服、乱れてるぞ」
 ようやく樹里が口を開く。
 刺々しい口調で指摘されて、充は慌てて制服の乱れを正した。
「充くんの節操なし。キチク。ケダモノ」
「そ、それは、あまりにも酷すぎるんじゃない、水柯ちゃん」
 充は口元に引きつった笑みを刻みながら、縋るような眼差しを水柯に向けた。
 だが、水柯はあっさりと充を無視した。
 目が合った瞬間、思い切り顔を逸らされたのである。
「樹里……」
 助けを請うように樹里の傍へ寄る。
 しかし、それさえも素っ気なく拒まれてしまった。
「香水臭い。傍に寄るな」
「……二人とも、今更のように白眼視することないだろ。俺がこんなんだって、昔から知ってるくせに。それに、男として利己の欲求を満たそうとするのは当然の行為だろ。据え膳食わぬは男の恥、だ」
「世界中の男が、みんなおまえと同じ思考回路を持ってると思うなよ」
 すかさず樹里に釘を刺される。
 一拍の間を措き、彼は仰々しく溜息を吐き出した。
「まあ、由香里さんが相手なら気持ちも解らなくはないけど。でも、何も学園前に車を停めることはないだろ。少しは考えろよ」
 樹里に迂闊さを責められて、充は悄然と頷いた。
 居合わせたのが樹里と水柯だからよかったものの、他の生徒であったなら『園田充漁色列伝』に新たな一ページが加わることになっただろう。
 誇大な妄想を含んだ噂が学園中を飛び回るのだ。
 想像しただけでもゾッとする。
「キチクの充くんには、時と場所なんて関係ないのよね」
 そっぽを向いたまま水柯が嫌味を放つ。
「ちょっと水柯ちゃん。頭に『キチク』ってつけるのは勘弁してよ。学園前に停車したのは偶然なんだし、そもそも文句なら運転してた由香里に言ってほしいね」
 充は早々と開き直ることに決め、この場にはいない由香里に責任転嫁する。
 更に、一刻でも早く嫌な雰囲気を断ち切ろうと、別の話題を振ることにした。
「ところで、二人の方こそ何してたんだよ。もしかしてデート?」
 言った瞬間、水柯の頬がピクリと震えた。




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