ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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五.目醒め



 熱い湯が、頭上から降り注いでいる。
 櫻町由羅は湯気の籠もったバスルームのタイルに座り込み、頭からシャワーを浴びていた。
 目の前の等身大の鏡に両手を当て、曇りを拭う。
 自分の生白い顔を見て、由羅は唇の両端をつり上げて笑った。
 ピシッ。
 鏡に亀裂が入る。

「誕生日おめでとう、安芸」

 愛情を込めて、祝辞を述べる。
 ピシリッ。
 鏡に走るひびが増殖した。

「今日が、おまえの――命日だ」

 最大限の憎しみを込めて、今度は呪いの言葉を吐き出した。
 安芸に対してとも鏡に映る己に対してともとれる、曖昧な言葉だった……。

「サヨナラ――」

 抑揚のない声音で告げてから、由羅は双眼をカッと見開いた。
 ピシッ!
 パリン、パリン、パリンッ!
 小気味よい音を立てて、鏡が砕け散る。
 頬にも腕にも足にも、鏡の破片が舞い落ちる。
 綺麗な赤い液体が、湯に混じって流れ始めた。
 それを由羅は冷ややかに見つめていた。
 やがて、由羅の顔に薄い微笑みが広がる。
 美しいが、何の感情も表現していない人形めいた微笑だった――


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2009.07.27 / Top↑
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