ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 体育館の扉は旧校舎のマスターキーで容易に開いた。
 その奥にある第二の渡り廊下へと続く扉も同様だった。
 武道館へと繋がる細い廊下を歩きながら、水柯は忙しなく周囲を見回していた。
 道すがら、目についた照明のスイッチを全部オンにしてきたので懐中電灯は不要なものとなり、今は水柯の手の動きに合わせてブラブラと揺れている。
「やっぱり武道館の明かりだわ」
 渡り廊下の窓から外を眺めると、橙色の明かりをはっきりと視野に捉えることができた。
 目前に迫った武道館から明かりが洩れている。
 水柯は武道館の入口に鍵を差し込んだ。
 これも旧校舎のマスターキーで易々と開いた。
 扉を押し開け、武道館に足を踏み入れる。
 ストンッ!
 耳慣れない音が響いたのは、その時だった。
 水柯は思わずビクリと身体を震わせた。
「い、今、何か物音がしなかった?」
「したような気がする」
 樹里が僅かに表情を強張らせる。
「聞こえちゃったな。で、今更言うのもなんだけど、武道館の照明なら、正門を乗り越えた時点で気づくのが普通じゃないか」
 充が言いにくそうに言葉を紡ぐ。
 水柯たちが塀をよじ登り、敷地内に侵入した時、学園は暗闇に包まれていた。
 武道館は、体育館よりも大きな建造物だ。
 そこに明かりが灯っていたなら、必ず目につくはずだ。
 学園侵入という悪行のために気持ちが昂揚していたとしても、三人揃って見過ごす可能性はゼロに近いだろう。
「考えてみると、おかしいわよね。しかも、ここは施錠されてたし、真っ暗だし……」
 水柯は気味が悪いのを堪えて、武道館の内部に視線を流した。
 広大な面積を持つ六角形の武道館。
 その内部は、幾つかの道場に分かれている。入ってすぐのところが剣道場。その奥に、柔道・長刀・合気道・空手など様々な道場が配置されているのだ。
 水柯たちが今いる剣道場には、闇が漂っていた。
 人の気配は感じられない。
「どういうことよ、樹里」
「僕に訊くなよ。僕らが校舎に入った後、どこかの道場の明かりがついたんだろ」
 樹里は入口付近から動けずにいる水柯の背中を押し退け、剣道場の奥へと進んだ。
「そんな簡単に言わないでよ。どうして、封鎖されてるのに勝手に照明がつくわけ?」
「勝手に、って……。漫画家だろ。少しは自慢の想像力を働かせろ」
 樹里が酷薄に告げ、剣道場の出口――柔道場に続く扉を開けた。
 ここも真っ暗だ。
「何よ、教えてくれたっていいじゃない」
「答は単純明快だよ。武道館の中に誰かがいるんだ」
 水柯を宥めるように充が説明する。
「誰かって、学園は封鎖されてるのよ。幽霊や化け物だったら、どうするのよ」
「現に俺たちだって忍び込んでるわけだし、他に誰かいたって不思議じゃないよ。ホント、水柯ちゃんは心配性な――」
 ストンッ!
 突如として、充の声が得体の知れない音に遮断される。
「うわっ、またよ!」
「うるさいぞ。一々喚くな。音は弓道場の方から聞こえた。幽霊かどうか確かめるんだろ、水柯? ――さっ、行くよ」
 樹里が邪険に水柯を促す。
 充に背中を押される形となった水柯に、反論の余地はなかった。
 樹里が駆け出すのに合わせて、水柯と充の歩調も強まる。
 弓道場は武道館の最奥に位置している。
 道場の一部が外界に露出しているために、一番奥に造られているのだ。
 柔道場を右に進み、長刀道場を突っ切ると弓道場に出る。
 水柯たちは弓道場へと続く木戸の前まで来て、一旦足を止めた。
「こ、怖いからやめようよ」
「平気だよ」
 怯える水柯を無視して、樹里が平然と木戸を引き開ける。
 途端、眩い光が視界を奪った。
 あまりの眩しさに閉じてしまった瞼を再びはね上げた瞬間、
「――えっ?」
 水柯は我が目を疑った。




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2009.05.30 / Top↑
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