ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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一章



 うだるような夏の熱気が全身に纏わりついている。
 それだけでも充分鬱陶しいのに、追い打ちをかけるようにインターホンのチャイムが鳴り響いていた。
「うぜぇ……」
 曽父江零治(そふえ れいじ)は唸るように一声発し、寝返りを打った。
 目を開けると見慣れたリビングが飛び込んでくる。
 ブラインドの下りていない大きな窓からは、容赦なく陽光が射し込んでいた。
 光に脳が刺激された瞬間、昨夜から今朝にかけてずっと映画を鑑賞していたことを思い出した。レンタルDVDを五本観終えたところで睡魔に負け、そのままリビングのソファで眠りに就いてしまったのだ。
 眩しさに目を細めながらソファから身を起こす。
 インターホンのチャイムはしつこく鳴り続けていた。途絶える様子は全くない。
「……解ったよ、出ればいいんだろ」
 零治は眠りを妨げられた不愉快さに舌打ちを鳴らし、渋々立ち上がった。
 壁時計に視線を走らせる――時刻は正午を示していた。
 折角の夏休みだというのに、たったの四時間しか寝ていない。その事実に新たな不快感を覚え、零治は苛々と片手で髪を掻き上げた。
 鮮やかな黄金色の髪が陽光を受けてキラキラと輝く。
 真夏の鮮烈な陽射しに目を眇めたところで、またチャイムが鳴った。
「ハイハイ。今、出るよ」
 零治は半ば自棄になりながら独り言ち、壁面に設えられたインターホンへ歩み寄った。面倒臭いので監視カメラは作動させていない。真っ黒な液晶を一瞥し、受話器を手に取った。
『居留守なんて使うなよ。さんざん待たせやがって。早く開けろ』
 零治が一言も発しないうちに受話口から陽気な声が飛び出してくる。
 相手は名乗りもしない。声を聞かせるだけで、自分が何者であるのか判別できると勝手に決めつけているらしい。
 実際、零治はすぐに相手を特定できたのだが、安眠をぶち壊された腹いせに無言で受話器をフックに戻してやった。
 直ぐ様、抗議するようにチャイムが鳴り響く。
 零治は機械的な動作で再び受話器を持ち上げた。
『オイ、切るなよっ!』
 受話口から微かな怒気を孕んだ声が流れてくる。友人の和泉隆生(いずみ たかお)だ。
「夏休みが始まって、まだ一週間だぞ。隆生の顔なんて見たくもないね」
『冷たいヤツだな。二学期が始まるまで、オレと遊ばない気かよ? とにかく開けろ』
「――勝手にしろ」
 素っ気なく応じ、零治はオートロックの解除ボタンを押した。
 受話器を戻し、玄関まで足を運ぶ。
 チェーンを外し、シリンダーを回していると、階段を昇る軽快な足音が近づいてきた。
 程なくして、玄関ドアが勢いよく開かれる。
「よっ、零治!」
 コンビニの袋を得意気に差し出し、和泉隆生が満面の笑みを浮かべた。



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2009.07.29 / Top↑
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