ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
「あんたたち、二人とも悪いわよ!」
 ズカズカと少年たちに歩み寄り、鋭い眼光で睨めつける。
「朝から何バカなことやってるのよ。みっともないわね」
「な、何だよ、水柯」
 樹里が、唐突に現れた幼なじみに驚いたように僅かに後ずさる。
「女の子を泣かせるなんて、最悪。あんな応え方ないでしょ。幼なじみとして、顔から火が出るほど恥ずかしかったわ」
「一々うるさいぞ、このマンガオタク」
「マンガを好きで何が悪いの? わたしは近い未来、プロの漫画家になる人間よ!」
 水柯はギュッと拳を握り締め、語気も荒く言い返した。
 確かに水柯は、マンガ同好会に所属するほどの『マンガ大好き人間』だ。
 青春と情熱の全てをマンガに注ぎ込んでいる、と断言しても過言ではない。
 だが、それと今の論点は別次元の問題だし、如何に幼なじみといえどもマンガを馬鹿にするのは許せない。
 漫画家を目指す水柯の夢をけなすような発言も到底いただけるものではない。
「おまえが漫画家になれるわけないだろ」
「絶対なってやるわよ!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。話がズレてるんだけど」
 充が、今にもとっ組み合いを始めそうな水柯と樹里の間に割って入る。
「そうだったわ。――樹里、あんた、また女の子をフッたわね」
 充に指摘されて、水柯は慌てて我に返った。
 改めて、厳しい視線を樹里に注ぐ。
「それがどうかした?」
「信じられない神経してるわよね」
「みたいだね」
 樹里が悪びれもせずに肩を聳やかす。
 水柯は呆れ混じりに盛大な溜息をついてみせた。
 それから視線を充に移す。
「充くんも女の子を煽っちゃダメよ。いくら充くんが女の子に優しくてもね、さっきのは逆効果なんだから」
「……了解、水柯ちゃん」
 充が渋々と頷く。
 しかし、こちらも反省しているようには全く見えなかった。
 顔には相変わらず微笑が張りついている。
「まったく、あんたたちときたら最悪の二人組ね!」
 水柯は小さく舌打ちを鳴らすと、今まで以上に苛烈な眼差しで二人を睨みつけた。
「聖華学園二年B組、田端樹里。無類の女嫌い。今年に入ってフッた女の数は、さっきのを入れて四十七人。同じく二年B組、園田充。無類の女好き。今年に入ってつき合った女の数は、四十八人」
「おっ、俺の方が一人多い。俺の勝ちだな」
 口笛を鳴らし、充が愉しげに笑う。
「充くん!」
 すかさず水柯が叱咤の声を飛ばすと、充は微笑を苦笑へと変化させた。
「女嫌いと女好き――こんな二人が親友だなんて信じられないわね。あんたたちの共通点といったら、どっちも『酷い女泣かせ』って、とんでもないものしかないんだから。ホンット、女の敵だわ!」
「安心しろ。僕は水柯を女と見なしてないから」
 樹里が淡然と告げる。
 水柯は眦を吊り上げて樹里を見返した。
「それ、どういう意味よ」
「そのまんまの意味だよ。――行こう、充」
 樹里は水柯を無視するように充を促し、歩き始める。
 従順に充がその隣に並んだ。
「ちょっと待ちなさいよ!」
 水柯は怒声を放ちながら、ろくでなし二人組の後を追った。
 さっきまで晴々としていた心を、あの二人に返してもらいたい気分だった。




* NEXT  * INDEX  * BACK
スポンサーサイト
2009.05.17 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。