ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 突如として、セリエが宙のある一点を凝視する。
 魔術に関しての知識はあるものの、それを駆使する能力のないクラリスには全くその気配が掴めなかった。
 魔力・呪力・法力――そういった類のものは天賦の才であり、これを持って生まれなかった者はいくら努力してもそれらの稀有な能力を使うことはできないのだ。
 魔術師・呪術師・神官などが修行や鍛錬を積み重ねるのは、生まれ持った特殊能力を最大限に活用できるようにするためなのである。
 誰よりも早くシンシリアの気配を察知することができたセリエには、魔術師の素質が備わっているのだろう。
 クラリスたちが注目する中、当のシンシリアは虚空を切り裂くようにして忽然と姿を現した。
 彼の腕には、しっかりとマイトレイヤーが抱かれている。
 兄の細腰をシンシリアの腕ががっしりと捉えていることに、クラリスは一瞬、激しい嫉妬を覚えた。
 ――が、今は妬心に身を焦がしている場合ではない。
 帰ってきた。
 最愛の兄が生きて戻ってきたのだ。
 目の前に大好きな兄がいる――その現実だけで、シンシリアの所業も何もかも赦せる気がした。
「クラリス――」
 地上に降り立つなり、マイトレイヤーはシンシリアの腕から抜け出した。一目散にクラリスの元へと駆け寄ってくる。
 以前より少し痩せたようだが、兄の美貌に翳りはなかった。
 靡く白金髪も愁いを帯びた菫色の双眸も――眩いばかりの美しさに満ちている。
 クラリスは夢見がちな表情で、駆けてくる兄を見つめていた。
「――クラリス!」
 マイトレイヤーの腕がフワリと自分を抱き寄せる。
 懐かしい兄の匂いと抱擁に、クラリスは眩暈にも似た感慨を覚えた。
 本当に帰ってきてくれたのだ。
 シンシリアに心惹かれながらも、兄は自分の元へ帰ってきてくれた。シンシリアを愛したからといって、自分のことを嫌いになったわけではない。昔と変わらず自分を大切に想ってくれているのだ。
 それだけで充分だった。
 それ以上、何も望めない。
 マイトレイヤーがシンシリアに心底惚れているのは事実だ。今のマイトレイヤーにはシンシリアの傍にいられることが至上の歓びであり、幸せなのだろう。
 恋する兄の心情が解ってしまうからこそ、クラリスにはそれを破壊することなど到底できない。
「……お帰りなさい、兄上」
 クラリスは兄の長い髪に顔を埋めると、そっとその背を抱き締めた。
「クラリス、クラリス……迷惑をかけてしまいましたね」
 マイトレイヤーがクラリスの首に腕を回し、何度も名を呼ぶ。
「迷惑なんて――これっぽっちもかかってません。僕は、兄上のためなら何でもできるし、どんなことでもしますよ。でも……本当に心配しました。兄上が酷い目に遭っているのではないか、と――。今度からは、しっかりとシンシリアに護ってもらって下さいね」
 クラリスは皮肉ではなく心からそう思った。
 シンシリアは心身共に強い人間だから、マイトレイヤーひとりくらいその腕に抱えても重荷にも苦にもならないはずだ。
 悔しいけれど、シンシリアは兄を護るに相応しい男なのだ。
 本人には絶対に言わないけれど、彼に兄を託そう――とクラリスは密やかに決心した。
「――ラザァ!」
 しばらく二人だけの世界に没入していた兄弟の耳に、シンシリアの非難たっぷりの声が届けられる。
「どうして、こんなところに姫がいるんだっっ!?」
 シンシリアが驚愕も露わにビシッと指を突きつける。
 その鋭い指先は、真っ直ぐにセリエを指していた。



遅々としてストーリーが進まなくて、スミマセンッ(汗)
もうすぐ終盤なので、更新間隔を開けないように……精進します(笑)

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2009.08.07 / Top↑
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