ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
 旧校舎L字型部分の長い廊下を左に折れると、新校舎へと繋がる廊下へ出る。
 一行は、懐中電灯を持つ樹里を先頭に疾駆を続けた。
 しかし、生徒玄関前に差し掛かった直後、先陣を切る樹里の足がピタリと止まったのである。
 他の三人も自然と彼に倣う。
「……何だと思う、コレ」
 樹里が首だけをねじ曲げて皆を振り返る。その顔は険しくしかめられていた。
 樹里の前方では、懐中電灯の光を浴びて何かがキラリと輝いている。
 それは、揺れる水面だった。
 天井から床まで垂れ下がった水の膜が、行く手を阻んでいるのだ。
「水? 何で、こんなところに……」
 充が怪訝そうに水のヴェールへ指を伸ばす。
「うわっ!」
 触れた瞬間、充は慌てて手を引いた。
「弾き……返された」
 充の口から悚然とした呟きが零れる。
 畏怖の眼差しが、揺れる水面を凝視した。
「水妖の仕業か」
 舌打ちしながら樹里が水の壁を睨む。
 尋常ではない。有り得ないことだ。
 水が何の支えもなしに壁を張り巡らせるなんて。
「樹里、下がって」
 水柯は憤然と樹里を押し退けた。
 そのまま水壁に向かって突進を開始する。
「こんなもの、何よ!」
 気合いの叫びを発し、立ちはだかる水壁に体当たりする。
 ほんの一刹那、水柯の身体を柔らかい液体の感触が包んだ。
 だが直ぐ様、水壁から得体の知れない圧力が加えられた。
 水の膜が激しく波打ち、水柯の通過を拒絶する。
 意想外のパワーに水柯は弾け飛んだ。
「きゃっ!」
 水柯の身体は物凄い勢いで宙に舞った。
「水柯っ」
 樹里が咄嗟に手を出す。
 しかし、急なことだったので片手しか出なかった。
 それが災いし、樹里は水柯もろとも後方へ飛ばされた。
「げっ、冗談だろ!」
 次に餌食となったのは充だった。
 二人を受け止めようと鞄を放り出して両手を広げたのだが、呆気なく巻き込まれてしまう。
 団子状態に絡まりながら飛んでくる三人を見て、徳川直杉は数年振りに驚きを顔に表した。
 素早く鞄を投げ捨て、見開いた両眼で前方を睨めつける。
「園田の阿呆っ!」
 直杉は態勢を低くし、両の掌を襲い来る三人に向けて突き出した。
 風圧に負けじと、双眸に気迫を込める。
「はあっ!」
 気合いとともに直杉は掌をグッと押し出した。
 転瞬、宙を飛ぶ三人と直杉の間で空気が一気に膨れ上がった。
 直杉の全身からは凄まじい《気》が発せられている。
 旧家の跡取りとして護身用に叩き込まれた古武道が、こんなところで役に立つとは直杉自身想像だにしていなかった。
 だが、役に立つことに文句はない。
 直杉の掌底から迸る《気》のおかげで、三人を吹き飛ばす威力は急激に弱まった。
 しかし、緩やかになったものの、水柯たちの身体は確実に直杉目がけて飛来している。
 仕方なく、直杉は素手で三人の身体を受け止めた。
 衝撃の余波を受けて、一メートルほどずるずると後ずさる。
 そこで、ようやく四人の後退は止まった。




← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト
2009.05.31 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。