ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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OPENING



 東京都内屈指の名門校――私立聖華(せいか)学園。
 創立六十周年を迎えるめでたい春の日。
 学園の理事館には陰湿な空気が漂っていた。
「ついに、この年がやってきてしまった」
 机に両肘をつき、理事長代理は神妙な顔で呟いた。
「あと数日で真の理事長が十八歳になってしまいますな……」
 理事長代理の向かいに立つ白髪の男が、嘆かわしげに相槌を打つ。
「うむ。先代理事長が亡くなり、私が代理になって早三年。私がこの理事長室の主でいられるのも、理事長が十八の誕生日を迎えるまで……。それが、先代理事長の遺言だ。しかし、しかし……! この学園をあんな小僧に渡すのは口惜しいと思わないか、学園長?」
「我が学園は全国に名を轟かせる名門校ですぞ。その経営を十八歳の若造に任せるなど、狂気の沙汰としか思えませんな」
 学園長と呼ばれた男が大きく首肯する。
「そうだろそうだろ、学園長! そこでだ――二人で、この学園を乗っ取ってしまおうではないか?」
 理事長代理の唇が悪意に醜く歪む。
「いい考えですな、理事長代理」
 学園長も欲望の渦巻く眼差しで理事長代理を見返した。
「ふっ……珍しく意見が合ったな、学園長。理事長を学園から追放した暁には、私が正式な理事長。君が副理事長だ」
「有り難きお言葉ですな」
「ふっ……ふふふふふっ!」
「ほほほほほほほっ!」
 不気味な笑い声の唱和が理事長室に谺する。
 それぞれの脳裏で己が野望と欲望を妄想させた後、二対の狡猾な瞳が一致団結するようにピタリと合致した。
「理事長を追放するには、まず邪魔者を排除せんとな」
 冷然とした口調で理事長代理が告げる。
「黒井先生のことですかな?」
「それもある。しかし、アレには迂闊に手が出せん……。アレの遠縁だという薔薇子先生にも困ったものだが、アレは更に輪をかけた奇人だ。何だって黒井一族から二人も教師を雇っているのだ、我が学園は?」
「先代理事長が黒井一族をお気に入りでしたからな。アレの父親のことを考えると、アレには到底手を出せませんな」
「まあ……アレのことは放っておいていいだろう。問題は、理事長の友人どもだ」
「ですが、彼らは我が学園に多大な寄付をしてくれる資産家の子息たちですぞ」
「この際、仕方がないだろう。私と君がこの学園を手中にするためだ。やむを得ん」
「そうですな。噂によると、彼らは何か怪しげな《力》を使うというではありませんか?」
 一抹の不安を消去し切れぬように、学園長が真摯に言葉を紡ぐ。
「ただの噂だ。それよりも、これが理事長の友人リストだ」
 理事長代理は学園長の言葉を一蹴し、机の上にバサリと幾つのかの書類を広げてみせた。
 理事長代理の顔に醜悪な笑みが浮かび上がる。
「このブラックリストに載っている者は全て、学園から抹消する――」



     「LIST.1 TAKAMARU GIONJI」へ続く



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2009.08.08 / Top↑
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