ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
LIST1 TAKAMARU GIONJI



 既に陽が落ちている遅い放課後。
 祇園寺高丸(ぎおんじ たかまる)は部活を終え、自分のクラスである3-Eに荷物を取りに戻った。
 人目を惹く一九六センチの長身を窮屈そうに屈め、教室のドアを潜る。
「ふあぁぁぁ……眠い……」
 高丸は自分の席へ向かいながら思いっきり身体を伸ばし、大きな欠伸を放った。
 高丸は聖華学園高等部のバレーボール部に所属している。
 中学の時に全国大会準優勝を果たしたことが契機で、東京都M市にある文武両道の名門校――私立聖華学園からお呼びがかかったのだ。
 いずれは東京進出を――と考えていた高丸には、願ってもないチャンスだった。当然、聖華に進学することを即決した。
 高等部入学以来、特待生として毎日バレーボール漬けの生活が続いている。
『春の高校バレー』で二年連続、聖華学園を全国優勝へと導いた偉大なスーパーエース。
 今現在、彼の目標は国体での全国制覇。
 そして野望は、全日本メンバーに入り、ワールドカップ&オリンピックで世界制覇。
 この二項目に関して、高丸は多大な情熱を費やしていた。
 バレーボールに一生を捧げていると言っても過言ではない。
『熱血バレーボール馬鹿』というのが、彼の本性であった。
「さーて、帰るか」
 高丸は鞄を手に取り、クルリと踵を返す。
 転瞬、誰もいなかったはずの教室に自分以外の人間を発見して驚いた。
 一人の少女がドアの近くに立っていたのだ。
「あっ、あの……祇園寺先輩……」
 キリッとした眉と瞳、顎のラインで揃えられた髪が印象的な少女だ。
「あたし、二年の白羽美麗(しらは みれい)っていいます」
 少女――美麗が、高丸に歩み寄り、決意を秘めた双眸を送ってくる。
「あ? ああ、生徒会の……」
 ――副会長だ。
 名乗られて、高丸は彼女が生徒会メンバーの一人だということを思い出した。生徒総会などで何度かお目にかかったことがある。
「オレに何か用?」
「あたし、先輩のこと……祇園寺先輩のことが好きなんです!」
「――えっ!?」
 瞬時、高丸は絶句した。
 驚愕のあまりに口が半開きになり、瞬きが停止する。
「あー、えーっと……イキナリそんなこと言われてもなぁ。どうすりゃいいんだ?」
「どうすれば――って、そんなの簡単です。あたしと付き合って下さい、祇園寺先輩!」
 美麗が挑むように高丸を見つめ、その手を伸ばして高丸の腕に絡めてくる。
「そ、それは、ちょっと困るなっ!」
 高丸は慌てて美麗の手を振り払った。
「どうしてですか? あたしじゃ先輩に似合わない? 釣り合わないですか?」
 美麗は更に高丸ににじり寄ってくる。
「いっ、いや、そうじゃなくて……。オ、オレ、バレーのことで頭一杯だしっ……!」
 高丸は慌てふためいた。こんな時、何を言ってよいのやら全く思い付かない。
「ホラ。大会近いし、試験も近いし!」
「要するに、付き合う気はないってことですね? ――じゃ、いいです」
「は?」
「付き合ってくれなくてもいいです。その代わり――今、ここでキスして下さい!」
 予期せずして美麗がガバッと抱き着いてくる。
 高丸は慄然とその場に凍り付いた。
「な、なっ、なっ、何言ってんだよっ!?」
 何が何だかさっぱり理解できない。脈絡のなさすぎる展開だ。
「祇園寺先輩!」
 可能な限り背伸びをし、高丸の首に両腕を回した美麗が唇を寄せてくる。
「うわっ! わっ、わっ、わっ!」
 高丸はますます竦然とした。
 もう少しで唇と唇が触れ合う――その瞬間、ガラッと勢いよく教室のドアが開く音が響いた。
「悪いが、着替えさせてもらうぞ」
 凛然とした声と共に、袴姿の人物が颯爽と入室してくる。
 癖のない長い黒髪を頭の高い位置で一つに束ねた佳人。
 純和風の毅然とした相貌が中性的で美しい。
「ヤ、ヤダッ! 徳川先輩っ!?」
 その姿を見た途端、美麗は慌てたように高丸から飛び離れ、一目散に教室から逃げ出してしまったのだ。
 美麗の後ろ姿を茫然と見送りながら、高丸は安堵の吐息を洩らした。
 とりあえず、当面の危機は回避できたらしい。
「相変わらず間抜け――と言うか、阿呆だな、祇園寺」
 正気に返ると同時に、袴姿の人物から冷ややかな言葉が飛んでくる。
「ほっとけ、徳川」
 高丸は忌々しげな舌打ちを鳴らし、クラスメイト――徳川直杉(とくがわ なおすぎ)を顧みた。
「着替えるんじゃなかったのか?」
「あれは嘘だ。祇園寺が困っているようだったのでな。あのような状況の時は、キッパリと断った方が身のためだぞ」
「オレのことを好いてくれる奴を冷たくあしらうなんて、オレの良心が痛む。オレは、おまえとは違うんだよ。この冷血漢が!」
 高丸は救われたことをさっさと念頭から締め出し、鋭く直杉を睨みつけた。
「私はいつ何時も、誰に対しても冷たい」
 直杉の顔に冷たい微笑が具現される。
 感情の片鱗も窺えない冷笑に、高丸は溜息を落とした。



 にほんブログ村 小説ブログへ  
← NEXT
→ BACK

ブログパーツ
スポンサーサイト
2009.08.09 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。