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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Tue
2009.08.11[20:37]

「榊先輩、一緒にお昼食べましょう!」
 明るい声音で告げ、白羽美麗は茜の顔を覗き込んだ。
「どうして?」
 茜が素っ気無い言葉と共に冷ややかな一瞥を与える。
「榊先輩と一緒に居たいからに決まってるじゃないですか!」
「悪いけど……俺、昼は食べないから」
 茜は美麗を突き放すように冷然と応対する。だが、彼女は怯まなかった。
「あたし、榊先輩のためにお弁当作ってきたんですよ」
 彼女は微笑を崩すことなく、馴れ馴れしくも茜の腕を両手で掴んだのだ。
 ――何なんだ、この子は?
 高丸は不気味なものを見る目付きで美麗を注視した。
 昨日、あれだけ熱烈に高丸に迫っておいて、一夜明ければ今度は茜だ。
 節操がないというか、信じられない根性と性格の持ち主だ。
 自分を諦めて新しい恋を発見するのはいい。
 だが、相手が茜となると別問題だ。仮にも自分のことを好きだったのなら、茜が自分の親友であることなど百も承知のはずだ。
 ――何を考えているんだ?
 高丸は疑惑の眼差しを美麗に注がずにはいられなかった。
「祇園寺先輩。榊先輩を借りてもいいですか?」
 高丸の視線に気づいたように、美麗が顔を上げる。
 強い意志を秘めた眼差しが、真っ直ぐに高丸を見据えていた。
「……何で、オレに訊くわけ?」
 高丸は考えを中断させて、不審げに美麗を眺めた。彼女の真意が掴めない。
「だって、祇園寺先輩はいつも榊先輩と一緒にいるじゃないですか」
 美麗はアッサリと述べ、鮮やかに微笑んだ。
 ――また、だ。
 高丸は不快も露に片方の眉を跳ね上げた。
 美麗の厳しい視線が高丸を睨めつけている。顔は笑っているのに、二つの大きな瞳だけは微塵も笑んでいない。朝同様、自分に挑みかかるようなきつい眼差しだ。
「解ってるなら、俺と高丸の邪魔をしないでくれ」
 押し黙ってしまった高丸を見兼ねたのか、茜が冷然と美麗に言葉を放つ。
「あら、そんなこと言っていいんですか? あたし――榊先輩の秘密、知ってるんですよ」
 穏やかな口調で告げ、美麗は茜の耳元に唇を寄せるのだ。高丸や直杉には聞こえないような小声で、何かを茜に耳打ちをしている。
「……解った。昼食に付き合う」
 美麗が唇を離すと茜は不承不承といった感じで頷き、席を立った。
「ありがとうごさいます、榊先輩!」
 勝ち誇ったような笑みを満面に浮かべ、美麗がすかさず茜の腕に自分の腕を絡めた。
「あっ、祇園寺先輩、早く昼練行った方がいいですよ! それから、徳川先輩――毛利先輩が捜してましたよ!」
 歩きながら美麗が振り返り、嫌味のような言葉を投げてくる。
 毛利というのは、直杉と同じ弓道部員で、生徒会の書記を務めている人物のことだ。
 得意気な笑顔を浮かべ、美麗は茜の腕にベッタリと張り付いたまま教室を出て行った……。
 後味悪く教室に取り残されたのは、高丸と直杉である。
「……昼練行こうかなぁ」
「うむ……」
 二人は何とはなしに顔を見合わせ、揃って教室を後にした。


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