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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Wed
2009.08.12[08:47]
     *


 全ての授業が終了した直後、高丸は物凄い勢いで教室を飛び出した。
 部活に向かうためではない。
 バレーボールと同等――いや、それ以上に重大な事態が起こったのだ。
 親友――榊茜の姿が見えない。
 五時限目も六時限目も、茜は授業に出席しなかった。
 つまり、白羽美麗に昼食を誘われて以来、茜は一度も教室に戻っていないのである。
 考えられるのは一つしかない。美麗が茜に対して何か良からぬことを画策したのだ。
 第六感が警戒音を発している。
 一刻も早く茜を探し出し、美麗の魔手から親友を救出しなければならない。
 募る不安と焦燥に心を急き立てられ、高丸は廊下をひた走った。
「祇園寺、ちょうどいいところに――」
 前方に直杉の姿を発見した。だが、今は相手をしている暇はない。
「話しがある――おい、待て、祇園寺! 保健の西野が――」
「悪い! 今、取り込み中だっ!」
 直杉の制止を無視して、高丸は猛スピードで彼女の脇を通り抜けた。
 三階から二階へと続く階段のところで、今度はバッタリ志緒と出会した。
「高丸く~ん! 健治くん、見なかった?」
「知らねー! アイツのことだから、とっくに帰ったんだろ!」
 おざなりに答えて、高丸は階段の手摺に片手をかけた。そのまま身を浮かせ、踊り場までの十二段を軽々と飛び降りた。着地と同時に、再び疾駆を開始する。
 紀ノ國屋の所在など知ったことではない。
 それに、紀ノ國屋と茜を比べたら――断然茜の方が大切だ。
 ものの数秒で紀ノ國屋の存在を脳裏から締め出し、高丸は二階へと急いだ。
 二階には二年生の教室がある。無論、白羽美麗の在籍する二年A組もだ。
 目指す教室に辿り着くなり、高丸は乱暴にドアを開けた。
「白羽美麗はいるか!」
 怒りに任せて叫び、教室内へ一歩踏み出す。転瞬――
 ガツンッッ!
 鈍い音と共に、頭部に激痛が走った。
「いってーっ!」
 反射的に後ずさり、額に手を当てる。焦っていたために身を屈めるのを忘れ、壁に思い切り額をぶつけてしまったのだ。
 ――不様だ。間抜けすぎる。
 胸中で己の迂闊さを呪っていると、前方にスッと黒い影が現れた。
「大丈夫ですか? 背が高すぎるのも問題ですね」
 クスクスと笑い声を立てながら、美麗本人が高丸の目の前に出現したのだ。
 高丸は額の痛みを堪え、キッと美麗を睨めつけた。
「茜は?」
「榊先輩……ですか?」
 美麗は何のことを問われているのか解らない様子だった。不思議そうに首を傾げている。
「榊先輩がどうかしたんですか?」
 返ってきた言葉に、高丸は小さく舌打ちを鳴らした。美麗は白を切り通す気なのかもしれない。
「茜を何処に隠した?」
「――は? 何のことを言ってるのか解りません。あたし、榊先輩とは昼休みに逢っただけですよ」
「茜が消えた。アンタと教室を出て行ったきり、帰ってこない」
「……あたしのこと疑ってるんですか?」
 美麗の顔がサッと翳る。傷ついたような、心外そうな眼差しがひたと高丸に据えられた。
「確かに榊先輩とは昼休みにお話しましたけど……それはもう済んだことですから。あたし――何もしてません」
「ホントなのか……?」
 猜疑の眼差しを美麗に注ぐ。
 美麗の表情がますます曇った。
「榊先輩のことなんて知りません。でも、あたしを疑うのは祇園寺先輩の自由ですから」
 素っ気ない口調で述べ、美麗が怒ったように踵を返す。
「あっ、オイ!」
 高丸の制止を無視して、美麗は教室へと戻ってしまうのだ。
 ――マジで知らないのか?
 美麗の不愉快そうな顔を見ていると、彼女を嫌疑の対象から外したくなってしまう。
 だが、間違いなく彼女が茜を最後に見た人物なのだ。疑うな、と言われても素直に信じることはできない。
 ――でも、あの子はオレに疑われたことに対して、明らかに怒っていた。
 美麗は本当に茜の行方を知らないのかもしれない。
「ウダウダ悩んでる場合じゃないよな……。とりあえず、茜を捜さなきゃ」
 高丸は美麗に対する疑惑を払拭するようにかぶりを振り、身を翻した。
 美麗を疑い続けても埒が明かない。
 ――校内を捜してみよう。
 そう心に決め、高丸は再び猛スピードで駆け出した。


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