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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Wed
2009.08.12[20:43]
     *


 校内を走り回ったが、結局、高丸は茜の姿を発見することができなかった。
 大事な部活をサボッてまで必死になったというのに、成果は全くなし。
 高丸は意気消沈し、とぼとぼと3-Eに向かった。
 重い足取りで三階へと続く階段を昇った時、
「あの、すみません――」
 高く澄んだ少女の声が耳に届いた。
 反射的に声の主を求める。
 視界に純白のセーラー服が飛び込んできた。
 ――ウチの生徒じゃない。
 不審に思い、じろじろと少女を見下ろす。
 この辺で純白のセーラー服といえば、青蘭女学院しかない。
「理事長室はどちらになるのかしら?」
 長いストレートの黒髪を腰まで垂らした美少女が、艶やかな笑みを浮かべている。
「理事長室なら二階の奥だけど、理事長代理なら校舎裏にある理事館にいる確率の方が高いぜ。――アンタ、青蘭の生徒だろ。何で聖華に?」
「わたくし、青蘭女学院の生徒会長を務めておりますの。今日は貴校との親睦会についてご相談に参りましたのよ」
 丁寧すぎるほど丁寧な口調で述べ、少女は高丸の脇を擦り抜けて階段を降り始める。
「あら、わたくしったらお礼を言い忘れていましたわね」
 不意に、少女が長い髪を揺らして振り返る。
「理事長室を教えて下さって、感謝致しますわ。申し遅れましたが、わたくしの名は黒井百合子といいます。以後、よしなに――」
 艶然と告げ、少女は軽い足取りで階段を降りていってしまう。
「……クロイ? あれ、馨センセと一緒だ」
 高丸は眉を顰めた。
 脳裏に自己至上主義の世界史教師の姿が甦る。
「いや、何も関係ないだろ。黒井なんて、珍しい名前じゃない」
 何か関係があると一瞬でも考える方がおかしいのだ。
 神経過敏になっている自分に気付き、高丸は自嘲の笑みを唇に刻ませた。気を取り直し、顔を前へ向ける。
 途端、些細な疑問が生じて首を捻った。
 聖華学園の各校舎は、広大な敷地内に効率よく配置されている。それらの校舎とは別に、理事長には専用の理事館なるものが用意されているのだ。各校舎にも一応理事長室が設けられているが、利用されることは殆どない。
 少女が理事館の存在を知らないとして不思議ではない。だが、高等部にある理事長室は二階だ。玄関から校舎に入り、順に教室を見ていったのなら、すぐに理事長室は発見できるはずだ。なのに、少女は三階にいた……。
「あの子、何で三階にいたんだろ?」
 疑問と共に階段を覗き込む。
 黒井百合子の姿は、もう何処にも見えなかった。



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