ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
BREAK2




 有原樹生は自宅の私室で、じっと物思いに耽っていた。
 机の上には、一枚のレポート用紙が無造作に置かれている。
 樹生は、紙面に添えられた写真に視線を注いでいた。
 愛くるしい顔の少女が微笑んでいる。
 ブラックリスト人物――松本志緒だ。
 可憐な顔立ちの少女を眺めていると、無性に腹立たしさと苛立ちを感じた。
 理事長代理と学園長から渡されたブラックリスト――生徒会が二人から依頼されたのは、ある人物たちの調査だ。彼らに『超能力』という妖しげな能力があることを確認し、それが危険なものならば即刻彼らを学園から追放する……。
 理事長代理と学園長の申し出に忠実に、生徒会メンバーは動き出した。
 彼らに不可思議な能力が存在することは確認済みだ。
「和泉田先輩は松本志緒に甘すぎる……」
 写真を睨み据え、唇を噛み締める。
 樹生が生徒会に入ったのも、理事長代理たちからの依頼に素直に従ってるのも、ひとえに悠南のためだけだ。
 悠南に対する尊敬・崇拝・憧憬の念だけが、樹生の原動力だ。
 初等部の頃から悠南は憧れの存在だった。
 初等部四年にして、上級生を押し退けて生徒会長の座に就いた悠南を樹生は純粋に『凄い』と感じたのだ。その想いは、中等部を経て高等部に上がった今も変わってはいない。
 沈着冷静・頭脳明晰――理知的で聡明な会長。
 心の中の悠南は、常にそんなイメージだ。だから彼に憧れ、樹生も初等部・中等部・高等部と生徒会執行部に関係してきた。
 直に接するようになり、また長い歳月が経過するうちに、胸中には『ボクだけが和泉田先輩の片腕なのだ』という自負と誇りが芽生えるようになった。
 その座を誰にも明け渡す気はない。
 ――ボクだけが和泉田先輩の隣に相応しい。
 愛情にも似た歪んだ想いが、樹生の心の裡には深く根づいている。
 それゆえに、悠南の心を乱す松本志緒の存在が赦せなかった。
「松本先輩には我慢できないね。ボクは、ずっと――松本先輩が嫌いだった」
 常に冷静で毅然としている悠南だが、松本志緒が関わってくると途端にそれが崩れる。松本志緒のこととなると悠南は感情を露わにし、爆発させる。
 それが気に食わない。
 昔から松本志緒だけが、唯一悠南の本性と本音を引き出すこのできる人物だった。
 それを考えると、胸がムカムカしてくる。悠南に心酔する樹生にとっては甚だ不愉快な存在だった。
 その松本志緒がブラックリストに載っているのは好都合だ。
「和泉田先輩の心の平穏を取り戻すためにも、松本先輩には消えてもらわなきゃね――」
 酷薄に言を紡ぎ、樹生は指で思い切り松本志緒の写真を弾き飛ばした。


     「LIST3 SHIO MATSUMOTO」へ続く



 にほんブログ村 小説ブログへ  
← NEXT
→ BACK

ブログパーツ
スポンサーサイト
2009.08.16 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。