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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Tue
2009.08.18[08:45]
     *


 祇園寺高丸は、授業終了のベルが鳴った後も着席したままボーッと考え事をしていた。
 口にくわえたシャープペンをブラブラと揺らしながら、紀ノ國屋健治行方不明事件に頭を悩ませる。
「何、アホ面してるんだ? 昼休みだぞ」
 不意に口からシャープペンが奪われる。
 ハッと我に返ると、榊茜が呆れ顔で高丸を見下ろしていた。
 茜の言葉通り、教室の随所では楽しいランチタイムが始まってる。
「ん、ああ……。いや、何かさ、徳川の言うことも頷けるかな、と――」
「私がどうかしたか、祇園寺」
「げっ! 地獄耳めっ……」
 音もなくスッと直杉が近寄って来たのを見て、高丸は軽く舌打ちを鳴らした。
「徳川が言っていた生徒会云々の話か?」
 顔を歪ませる高丸を無視して、茜が話を先に進める。
「ああ。ホラ、白羽美麗がこの前言ってただろ? 『二人とも気をつけて下さい』って」
「確かに、そんなこと言ってたな」
「あの時は、何のことを指してるのか全く理解できなかったけど……」
「それは、祇園寺と榊に今後何かが起こる――ということを示唆していたのではないか?」
 直杉が無表情のまま高丸の言葉を奪う。
「そうなんだよな。でも、思い当たる節はないし、オレにも茜にも何も起こらないし」
「何か起こったのは紀ノ國屋だしな」
 茜が困惑気味に告げ、肩を竦める。
「だが少なくとも、彼女は何かが起こることを知っていたわけだ」
 直杉は思うところがあるのか意味深に唇の端を吊り上げた。
「私としては、生徒会陰謀説が有力だと思うがな。学園長がサイコプラズマの存在を祇園寺に訊ねたのも気に懸かる」
「ああ……。あれ、ホントに何だったんだろうな?」
 高丸は数日前の篠田三次との会話を反芻しながら首を捻った。
「白羽美麗と学園長の言葉――そして紀ノ國屋の失踪を考慮に入れると、要因は我々のサイコプラズマにあると思えるのだが」
「何処からそんな突飛な考えを持ってくんだよ。飛躍しすぎじゃないのか?」
 高丸は胡散臭そうに直杉を見遣った。
「学園長が高丸たちの能力に気づき、それを生徒会に調査させてる――と、徳川は考えているわけだ?」
 またしても茜が高丸を無視して話を進める。
「しかも、サイコプラズマが危険なものならば、学園から排除しようとも考えているのではないかと……。生徒会執行部である白羽美麗は当然それを知っていた。だからそこ、祇園寺らに忠告をしたのではないか」
「けど、それが事実だとしても、あの子、オレを学園から追い出そうとか――そういう危害を加える素振りはなかったぜ?」
「それは、乙女心というやつではないのか。まあ、私には到底解らぬ心理だが」
 自嘲気味に言葉を連ね、直杉が唇を歪める。
「白羽美麗は高丸の追放を諦め、新たな生徒会の魔手が紀ノ國屋に伸ばされた、と」
 思案するように茜が呟く。
「私はそう睨んでいる。紀ノ國屋失踪にも生徒会が裏で絡んでいると思うぞ」
「志緒の言い分を聞いてると、オレも和泉田が犯人としか考えられないけど……。何考えてんだ、生徒会の奴ら?」
 高丸は眉間に皺を寄せ、唸るように言葉を吐露した。
 直杉の話を聞いていると、それが正しい推測であるように思えてくる。
 だが、生徒会の思惑については不明瞭な点が多い。何故、高丸たちが三年になった今、サイコプラズマを持ち出して学園から追い出そうとしているのか皆目理解できない。そうする機会など、今まで幾らでもあったはずだ。
「とにかく、生徒会が動いているかもしれない、ということは念頭に置いておいた方が賢明だと思うぞ」
「ハイハイ。確かに最近、オレたち生徒会と相性悪いみたいだしな」
 高丸は唇を尖らせ、渋々頷いた。
 高丸が美麗に執心され、悠南が志緒の許嫁であり、そのせいで紀ノ國屋が悠南に恨まれているのは動かしようのない事実だ。
「生徒会と言えば――昨日、毛利が徳川の写真を馨センセから貰ってたぜ」
 ふと、高丸は昨日の出来事を思い出した。
 生徒会書記の毛利さゆみが直杉の写真を欲したことが、妙に印象に残っている。
「毛利が? ……ふむ、奇特な女だ。あれほど私のことを毛嫌いしているのにな」
 直杉が他人事のように呟く。
「徳川と毛利って、昔は仲良かったよな?」
 茜が昔日を回顧するように目を細め、怪訝そうに問いかける。
「あれとは幼稚部からの腐れ縁だからな。確かに以前は懇意にしていた。だが、中等部に入ってから毛利の方が私をに避けるようになった」
「へえ、そうなんだ。んじゃ、何で毛利は徳川の写真なんて貰ったんだろうな?」
 高丸は初めて耳にする直杉とさゆみの関係を意外に思いながら、新たな疑問に眉を顰めた。
 避けて通っている直杉の写真を所望した、さゆみの真意が量れない。
「さあな。あれの考えることは私にも解せぬ」
「案外、毛利のヤツ、徳川のことが好きだったり――」
 冗談混じりの言葉は、直杉の鋭利な一睨みによって敢え無く封じ込められた。
 高丸は苦笑いを浮かべ、直杉から視線を逸らす。必然的に茜が視界に飛び込んできたので、誤魔化すように話題を転じた。
「茜に届くあのラブレター、まさかあれも生徒会絡みじゃないよな?」
 高丸が告げると、茜は露骨に不機嫌な表情で高丸を睨んできた。
 どうやら、あのラブレターは今日も茜の手許に届き、着実に彼の不快指数を高めているらしい。
「榊が生徒会に狙われる要素はないだろう」
 押し黙ってしまった茜に代わり、直杉が凛とした口調で述べる。
「次に狙われるとすれば、志緒か私だ――」
 サラリと不吉な言葉を吐き出し、直杉は口の端に艶然とした笑みを刻み込んだ。


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