ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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BREAK3



 毛利さゆみは、人気のない弓道場で遠くに存在する的を見据えていた。
 精神統一のため深呼吸を繰り返す。
 弓を構えた腕には緊張が漲っている。
 眼差しは鋭利に輝き、並々ならぬ気迫を表していた。
 程なくして、さゆみは弦を手放し、弓を射た。
 ストンという小気味よい音を立てて、矢が戸外の的に命中する。
 矢が刺さったのを確認し、大きく息を吐き出す。その時――
「いつもながらお見事ですね、毛利先輩」
 思いがけず背後から声をかけられて驚いた。
 振り返ると、いつの間に道場に忍び込んでいたのか白羽美麗の姿があった。
「君か……。何の用かな?」
「会長と樹生――失敗したみたいですよ」
「フッ。どうせ君が祇園寺たちに入れ知恵でもしたんだろう」
「もう……やめませんか? 祇園寺先輩たちに超能力があっても、別に構わないじゃないですか。あたしたちに害があるわけでもないし、学園側にも損はない。理事長代理と学園長に『害はなし』と報告すれば、それで済むことじゃないですか?」
 美麗が懇願するように言葉を連ねる。
「理事長代理たちの思惑など、わたしには端からどうでもいいことだね」
「彼らの目的って、本当に祇園寺先輩たちが狙いなんですか?」
「さあね。わたしには関係ない。わたしは、ただ徳川と決着をつけたいだけだ」
 冷淡に告げ、さゆみは美麗に背を向けた。
 的に刺さった矢を回収しに、地面へと降りる。
「やめましょうよ。本当は毛利先輩――徳川先輩のこと好きなんでしょう?」
 背後から届けられた言葉にさゆみはゆっくりと美麗を顧み、冷たい笑みを贈る。
「それ以上言うと、君でも容赦しないよ」
 さゆみが酷薄に言を紡ぐと、美麗は肩を竦め、無言で道場から立ち去った。
 美麗の姿が完全に消えるのを見届けてから、さゆみは再び的へと向かって歩き始めた。
「別に徳川個人が憎いわけじゃない。わたしは徳川を憎むように躾けられてきただけだ」
 遙か昔から連綿と続く武家に生まれ、武道を修得させられ――厳しい家訓の許で育てられ、躾けられてきた。徳川直杉と同じように。
 武家の末裔。武芸に秀でた家系。
 似たような条件の中、同じ聖華学園で幼稚部から共に育ってきた。
「なのに、わたしは一度も徳川に勝ったことがない。それを一族は『毛利の恥だ』と非難する……。下らない。実に下らないね」
 的の前で立ち止まり、見事中央に命中した矢に手をかける。
「馬鹿馬鹿しい。頭の硬い老獪たちは、いつまで戦国気分でいるつもりだ? 下らない。疾うに失われた誇りと栄華にしがみつく妄執――意味のない、虚栄に満ちた遊戯だ……。なあ、そう思わないか、徳川?」
 引き抜いた矢を、さゆみは無感動に見つめた。
 矢の尖端には、黒井馨から譲り受けた徳川直杉の写真が突き刺さっていた……。



      「LIST4 NAOSUGI TOKUGAWA」へ続く



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2009.08.21 / Top↑
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