ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 祇園寺高丸は朝練を終え、教室に戻る最中だった。
 新校舎の階段を軽快に上り、三階に到達したとこで見慣れた背中を発見した。
 思わず、顔にニヤケた笑みが浮かぶ。
「おっはよう、茜!」
 高丸は巧妙に生徒たちの隙間を縫って、親友の隣に並んだ。
「……おまえは悩みがなさそうで、いいよな」
 美貌の親友――榊茜は、疲れたような溜息を洩らしながら高丸を見上げてきた。
 ここ数日、朝の茜はいつにも増して機嫌が悪い。
 例のラブレターが毎朝ご丁寧に届けられるからだ。
「何だよ? また来てんのか、あの手紙?」
 高丸は浮かれた笑顔を消し去り、神妙な面持ちで茜を見返した。
「毎日毎日、飽きもせずにな……」
 茜が再び溜息をつく。
 幾分投げ遣りに聞こえたのは、高丸の気のせいではないだろう。
「いつも言ってるけど、あんま気にすんなよ。それより――もっと楽しいこと考えようぜ」
 茜の背中を軽く叩きながら、高丸は明るく笑った。
「楽しいこと、ね……」
 憮然とした表情で茜が呟く。
「そっ。明日、茜の誕生日じゃん」
 高丸は親友の顔を覗き込むようにして、弾んだ声音で告げた。
 明日は、茜の十八回目の誕生日なのだ。
「確かに誕生日だけど。それが、どうした?」
 茜は足を止め、不思議そうに高丸を見つめた。ちょうど3-Eの教室前だった。
「何か欲しいモンとかないのかよ?」
 高丸が陽気に訊ねた途端、茜の顔がピクッと引きつった。
「まさか……俺に何かプレゼントしようとか考えてるんじゃないだろうな?」
「おっ、よく解ってるじゃん!」
「うわっ、寒い奴……。高校生にもなって男から誕生日プレゼントなんて貰いたくもないね、俺は。ゾッとするからやめろ」
 冷たく高丸を突き放し、茜は教室へと入っていく。
「あっ、オイ、待てよ、茜!」
 高丸は慌てて茜の後を追った。
 教室に足を踏み入れようとした瞬間、
「いいじゃん、プレゼントぐら――――!?」
 ガツンッッッ!!
 と激しい物音が響き、目の前で火花が散った。
 間髪入れずに、額を尋常ではない痛みが襲う。
「いってぇっっっ!!」
 反射的に高丸は額を手で押さえ、その場に蹲った。
 身を屈めるのを忘れ、またしても壁に思い切り頭を打ちつけてしまったのだ。
 身長が一九〇を越えて以来、何度も同じ目に遭っている。その度に己を戒めているのだが、教訓は全く活かされていない。
 学習能力の低い己を胸中で呪いながら、高丸はゆっくりと立ち上がった。
「――大丈夫か、祇園寺」
 ふと、徳川直杉の凛然とした声が耳に届く。
「うるせぇ! ほっとけ、徳川!」
「相も変わらず、阿呆で間抜けだな。あまり馬鹿をやっていると、そのうち榊に愛想を尽かされるぞ」
 高丸が邪険に返事をすると、直杉は呆れた様子で大仰に溜息をついた。それから顔に冷笑を閃かせ、嫌味まで投げつけてくるのだ。
 反論する余地も与えずに、直杉は長い髪を靡かせて颯爽と教室に入って行ってしまう。
「くそっ。何だよ、茜も徳川も……!」
 不平を洩らしながら、高丸は痛む額を手で押さえたまま教室に足を踏み入れた。


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2009.08.22 / Top↑
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