ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 田端樹里は、水妖によって三階の廊下へと引きずり込まれていた。
「ちくしょう、離せ!」
 首を絞めつける水妖を両手で引き剥がそうとするが、水妖の力の方が遙かに強靱だった。
 いくら藻掻いても頑として離れない。
「水柯を返せよっ!」
 喉の痛みを堪えて叫んだ途端、水妖は樹里の身体を壁へ叩きつけた。
 肺が圧迫され、一瞬息が詰まる。
「――つっ……!」
 呼吸が再開した瞬間、樹里は苦悶の呻きを洩らした。
 身体は自然と壁伝いに崩れ落ちる。
 痛みに全身を苛まれる。
 乱れた白金髪の隙間から辺りを窺うと、青白く輝く物体が視界に飛び込んできた。
 水の化け物は、まだ首に絡みついている。
 触手のように伸ばされたその一部が、眼前で愉しげに揺れているのだ。
 水妖の冷たい触手が、唇をそっと撫でる。
「やめ……ろ……」
 苦痛に顔を歪ませながら、樹里は喉にへばりつく水妖に手をかけた。
 それをピシャリと触手が叩き払う。
 水妖はじりじりと樹里の首を絞めにかかった。
 目の前では、長く伸びた触手が蛇のように鎌首を擡げている。
「ぐっ……!」
 気管に容赦のない圧迫を受けて、樹里はたまらずに唇を開いた。
 ポタリ。
 機を見計らったように鎌首の先端から水妖の一部が滴り落ち、口から体内へと侵入した。
 直後、猛烈に全身が熱くなった。
 身体中の血液が沸騰しているような感覚が、樹里を襲う。
 高熱におかされ、意識が朦朧としてくる。
 ――伝説を信じた人たちは、こうして死んでいったのかな?
 ふと疑問が浮かんだが、それはすぐに激痛によって掻き消された。
 身を灼き尽くすような熱に意識が強奪されてゆく。
「……みず……え」
 ――明日、誕生日なのにゴメンな……。

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2009.06.01 / Top↑
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