ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「とうとう運命の日がやってきてしまった」
 和泉田雄一郎と篠田三次は、高等部理事長室にて密談を交わしていた。
「生徒会執行部の連中も役には立たなかったし――さて、どうしたものか? やはり、諦めるしかないのか?」
 和泉田は沈痛な面持ちで篠田を見つめ、自問するように言葉を繰り出した。
 生徒会執行部の相次ぐ失敗。
 真の理事長に手を出すどころか、その友人たちを追い払うことさえ成功してはいない。
 そして、運命の日――理事長の一八歳の誕生日がやって来てしまったのだ。
「しかし、口惜しい。この学園を手放すなんてことは考えたくもないな。……悪あがきを承知で、理事長に直接攻撃を仕掛けてみてもいいのだが……」
「しかし、紀ノ國屋の御曹司拉致事件もありますし、表立って事を起こすのは得策ではないと思いますな。我々の保身のためにも。それに、理事長に手を出せば、友人たちが黙ってはいないでしょう。彼らは何としてでも理事長を護ろうとするでしょうな」
「むぅ……」
 篠田の言葉に和泉田は両手で頭を抱え、くぐもった唸り声をあげた。
「先代の遺言通り真の理事長に学園が譲られても、それで我々が学園を追い出されるわけではありませんし――ここは一つ、計画そのものを水に流しては如何でしょう?」
「確かに、理事長が正式に就任したとしても、我らの立場は今しばらく変わらないだろう。それを考慮すると、この辺で手を引いた方がよいのかもしれんな。悪戯に理事長にちょっかいを出して、生徒会を裏で動かしたことが露見しても困るしな。……うむ。潮時だな」
 しばし思案した末、和泉田はアッサリと己が意見を翻した。
 理事長就任が避けられないものならば、理事長と懇意にしておいた方が賢明だろう、という考えに達したのだ。理事長の座が正式に埋まったとしても、自分に害はない。副理事長として、今までと何ら変わりない生活を営めばいいだけのことだ。
「そうですな。やはり我が身が一番――保身が大事ですからな」
 もっともらしく頷いてみせてから、篠田は和泉田に倣えとばかりに柔和な笑顔を作った。
「では、今までのことは全てなかったことに」
「それはよいのですが――百合子お嬢様のことは、どうしますかな? 何か役に立つのではないかと、半端に嗾けてしまいましたが……」
 篠田の顔に微かな不安がよぎる。
「そういえば先日、我が学園を訪ねてこられた時、百合子お嬢様の心に火を点けてしまったかもしれんな。しかし、それは我々とは何ら関わり合いのないことだ。実際、百合子お嬢様が理事長に対して事を起こしたわけではないし……。仮に起こしたとしても、我々には無関係の出来事だ。ふふふふっ」
 和泉田は双眸を鋭利に煌めかせ、不気味な笑みを零した。
「これ以降、理事長の周囲に何か変事が起こっても、我々は『知らぬ存ぜぬ』の態度を通せばよいだけのことだ。いいな、学園長」
「承知しております」
「では、我々の輝かしい前途と理事長の誕生日を密やかに祝福するとしようか、学園長。ふふふ……ふふふふふふふっ!」
「ほほほほほほほほっ!」
 和泉田と篠田は狡猾な眼差しを絡み合わせ、気味の悪い笑いを室内に響かせた。


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2009.08.23 / Top↑
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