ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「うげっ! でっけー家っ!」
「すっご~い! ヨーロッパのお城みたーい」
 紀ノ國屋と志緒が、同時に感激の叫びをあげる。
 それらの賛辞は、東京郊外――奥多摩に位置する黒井家の別荘に贈られたものだ。
 高丸たちは馨の運転するBMWに乗せられ、中央自動車道と青梅街道を経由して今し方奥多摩に到着したばかりだった。
 道程――約一時間半。
 とても都内とは思えないほどの緑と自然が眼前に広がっていた。
 黒井家の別荘は奥多摩湖の湖畔に、堂々と建てられていた。三階建ての白い洋館だ。門から屋敷までは三百メートルほどの距離があり、美しく手入れされた洋風庭園となっていた。
「馨センセって、お坊ちゃんだったんだな?」
 高丸は素直に感嘆を声を洩らした。
「ハハハハハッ! 僕の家は大金持ちなのだよ! 何を隠そう、今をトキメク文部科学省大臣――黒井権三郎とは、僕の父のことだ!」
 口許に手を添えながら、馨が高笑いを響かせる。
「大臣の息子が馨だとは、世も末だな」
「同感……」
 端的に意見する直杉に、高丸も頷いてみせる。
 きっと馨は、父親の根回しのおかげで教師になれたに違いない。
 そうでなければ、名門私立聖華学園にこんな破天荒な性格の教師が配属になるはずがないのだ。
 和泉田と篠田が馨に媚び諂っていたのは、文科省大臣である馨の父を畏れてのことなのだろう……。
「酷い言われようだね、僕も。――っと、おや、百合子にバレたようだ」
 不意に馨が眉を顰め、前方に視線を馳せる。
 釣られて視線を転じると、屋敷から漆黒の集団が飛び出してくるのが見えた。
「百合子の奴、簡単には榊君を返すつもりはないらしいね」
「返してくれないなら、力ずくで奪還するだけだ!」
 高丸は、門を目指してわらわらと集ってくる百合子の部下たちを睨めつけた。
「了解。思い切り暴れてきたまえ、諸君! 破壊したものの修理費は百合子に出させるから安心したまえ! ――さあ、いざ出陣!」
 ビシッ! と、馨が門の向こう側を指差す。
「志緒、頑張っちゃう~! ――ナオちゃん、お願い。コレ、開けて~」
 志緒がワクワクした口調で告げ、巨大な門扉に視線を流した。
 一つ頷き、直杉が静かに前に進み出る。
 門に手をかけた瞬間、直杉の全身に銀色の輝きが迸った。
 ガタンッ! と轟音を立てて門が大きく傾く。
 直杉は、門扉そのものを凄まじい力によって前に押し倒したのだ。
 彼女は、集結させた《サイコプラズマ》エネルギーを自在に操ることのできる稀有な人物だっ。目標物に直接エネルギーをぶつけ、攻撃を仕掛けることができるのである。
 地面に倒れた門を踏み付けるようにして、直杉が屋敷の庭に侵入する。
 高丸たちも彼女に倣い、庭へと足を踏み入れた。
 すぐ間近まで、百合子の部下たちが迫っている。
 躊躇うことなく、五人は黒い群れの中に身を投じた――


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2009.08.26 / Top↑
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