ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 眩い赤光が室内を縦横無尽に駆ける。
 高丸は訪れた衝撃に慄然と硬直していた。
 唐突に覚醒した力。
 誰もが持っている――だが、目醒めることは滅多にない力。
《サイコプラズマ》
 それが、茜を想うあまりに百合子の裡で深々とした眠りから醒めたのだ。
「……サイコプラズマ?」
 高丸は茫然と呟いた。
 百合子がそれに目醒めても不思議はない。彼女は、サイコプラズマを発揮できる馨の実妹なのだ。ただ突然すぎて、他に言葉が出てこなかった。
「――なっ……何ですの、これっ!?」
 百合子が、自分の全身を取り巻いている赤い光を恐れるように見つめる。
「わたくし……どうしましたの……? わ、わたくし……わたくし……変ですわ? おかしいですわ、こんなの! ……こんなの……こんなの――いやぁぁっっ!!」
 急激な変化に耐えられなくなったのか、百合子の唇から絶叫が迸った。
 持ち主に呼応するようにサイコプラズマが吼える。
 紅蓮の炎が四方八方に飛び散った。
「うげっっ!」
「いやぁ~ん」
 紀ノ國屋と志緒が、咄嗟にサイコプラズマでバリヤーを造る。
「サイコプラズマの制御ができぬのかっ!」
 襲い来る炎をバリヤーと手刀で防ぎながら、直杉が忌々しげに吐き捨てる。
「落ち着きたまえ、百合子!」
 馨が珍しく真摯な表情で妹に歩み寄った。
「でっ、でも、お兄様――!」
「それは超能力なのだよ! サイコプラズマは持ち主の感情に左右される。気持ちを鎮めれば暴走は止ま――ぐっっ!」
 百合子に触れようとした途端、馨が弾かれたように後ろへ飛び去る。
 百合子のサイコプラズマが更に燃え上がったのだ。
「感情を抑えろ、って……そんなに簡単にできませんわっ!」
 百合子の顔が苦悶に歪む。
 唐突に湧き出た未知の力を制御しろ、というのは酷な話だ。
 いきなり『超能力だ』と告げられても、それが自分に裡にあったこと自体、理解できないだろう。
「いっ、いやぁぁっっ!! 止まりませんわっ!」
 百合子の身体は真っ赤な炎に取り囲まれている。
 目醒めたサイコプラズマは、解放されたことを喜ぶように百合子に纏わり付いていた。
 渦巻く光の炎は、力の発生源そのものを呑み込もうとしているかのようだった。
「助けて、お兄様っ!」
 炎の中で百合子が助けを求める。『自分ではどうしようもない』と眼差しが訴えていた。
 思いもよらぬサイコプラズマの暴走は、生まれたての能力者には荷が重い。
「百合子!」
 馨が紫色の光を両手に集中させ、再度百合子に接近を試みる。だがしかし、馨の癒しの力は百合子の炎の前に呆気なく掻き消されてしまった。
「いやっ! 誰か助けてっ!」
 サイコプラズマの一人歩きが続行する。
 高丸は思案するように唇を噛み締めた。
 ――止めなければならない。
 百合子のサイコプラズマは、炎だ。
 高丸の冷却のサイコプラズマで抑えられるかもしれない。成功する可能性はある。やってみる価値はある。
 高丸は百合子へと向かって、足を踏み出した。
 百合子に接近し、彼女の前に手を差し出す。
 高丸は急いで精神を集中させた。
 すぐに髪が揺らぎ、青白い光が放たれる。凍て付くような冷気が、高丸の全身を覆った。
「いいか。オレに逆らおうとするなよ」
 高丸の言葉に百合子が炎の中で頷く。縋るような瞳が高丸に注がれた。
「よしっ!」
 高丸は思い切って炎の中に手を突っ込み、百合子の両手を力強く掴んだ。
 バチッッッッ!!
 炎と凍気のサイコプラズマが反発し合って、眩く、激しくスパークする。
「――くっ!」
 飛び散る火花にも拘らず、高丸はジリジリと百合子ににじり寄った。
 百合子から放たれる炎を精一杯の凍気でもって覆い尽くす。
「畜生! 消えやがれっ!」
 高丸はサイコプラズマを最大限に解放しながら、百合子を両手に抱き締めた。
 バチバチバチバチッッッ!!
 凄絶な勢いで赤と青の光が明滅を繰り返す。
 額に汗を浮かばせながら、高丸は全身の気を一息に高めた。
 冷ややかな青い輝きが赤光を消し飛ばす。
 瞬間、
 パチンッッッ!!
 両極を成すサイコプラズマが消失し、室内に静けさが戻った――



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2009.08.27 / Top↑
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