ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「あっ……ああっ………」
 百合子が、全身の力を失ったかのようにヘナヘナと床に崩れ落ちる。
 自分に起こった出来事が信じられないらしく、茫然自失状態に陥っていた。
「うえっ……危機一髪――」
 荒々しく肩で息をしながら高丸は百合子を見下ろした。
 サイコプラズマの使い過ぎで吐き気がするが、何はともあれ百合子の暴走が無事に収まって良かった。
「あ……ありがとう……」
 不意打ちのように百合子が謝辞を述べる。彼女にしては異例中の異例発言だろう。
 高丸は『結構可愛いことあるじゃん』と百合子を見直しながら、微かな笑みを彼女へ返した。
「いやいや。……アンタ、修行次第じゃ凄い能力者になれるぜ」
 高丸がサイコプラズマを使い果たしてしまうほどの強烈な力の持ち主だ。その潜在能力は未知数。まだまだ開拓の余地がある。
 百合子が素直にサイコプラズマの存在を受け入れてくれればいい、と高丸は心から願った。
「さて、と――帰ろうぜ、茜」
 深呼吸で息を整え、高丸は茜の傍に移動した。
 厄介払いは完了した。後は茜と一緒に帰るだけだ。
 が、しかし――
「だっ、駄目ですわっ!」
『茜』という一言に項垂れていたはずの百合子が勢いよく立ち上がり、素晴らしいスピードで茜に駆け寄ったのである。
「茜様は返しませんわっ!」
「オイ……オレはアンタを助けてやったんだぞ?」
 高丸は愕然と百合子を見つめた。助けてあげたというのに、まだ茜を自由の身にさせないつもりらしい。その執念が恐ろしかった。
「それとこれとは話が別ですわっ!」
 百合子がキッと睨みつけてくる。
 ――やっぱり可愛くねぇ……!
 こめかみをピクピクさせる高丸を無視して、百合子は茜に向き直った。
「わたくしは茜様のことを心からお慕いしていますのよ!」
 百合子は聞き訳のない子供のように、怒りを孕んだ眼差しでじっと茜を見つめている。
「わたくしは誰よりも茜様が好きですわ! ですから、茜様にはわたくしの傍にいてほしいのです!」
「……俺は好きじゃない」
 茜の冷酷な拒絶の言葉に、百合子の表情が凍り付いた。
「わたくしを好きじゃない……?  世界一の美少女である、このわたくしに恋をしないなんて――そんなこと納得できませんわっ!!」
 百合子はひどく自尊心を傷つけられたらしい。憤怒の形相で茜を見据えている。
「俺、他に好きな奴いるから」
 投げ遣りに、だが確固たる棘の鋭さをもって茜は応じた。
「嘘ですわっ!」
「ホントだって。俺――こいつが好きなの」
 唐突に茜は高丸を指差すのだ。
「――えっ? は? オ、オレッ!?」
 急に話題を振られて、高丸は驚愕と不審にギョッと目を丸めた。
 百合子の顔が怒りのために真っ赤に染まる。
「ふざけないで下さいませっ!」
「ふざけてないよ。なっ、高丸?」
「はっ? えっ、あっ……ああ……」
 訳が解らずに、高丸は曖昧な相槌を打った。
 サイコプラズマの多大な消費で疲弊し切り、正常な思考能力が失われている。茜の考えがいまいち把握できなかった……。
「ホラね。これで解っただろ?」
「解りませんわっ! そんな苦し紛れの言い逃れ、とても聞き入れられませんわっ!」
「しょうがないなぁ……。あー、面倒臭い。――じゃあ、本気だってこと証明してやるよ」
 茜は溜息を一つ落とすと、急に両手を高丸に向けて伸ばしてきたのだ。
 高丸は茜の腕が自分の首に回り、そっと自分を引き寄せるのに茫然と身を任せていた。
 茜の端整な顔が接近してくる。
「――えっ?」
 と、思った瞬間には、茜の唇が自分の唇に重ねられていた。
 ボッと一気に頭に血が上る。
 ――あ、あっ、あっ、茜ぇぇぇっっ~!?
 頭が即座にパニックに陥った。
 高丸は、突如訪れた危険で甘美な衝撃に恟然と双眸を見開いた。
 何も考えられない。
 茜とキスしているなんて、夢のようだ。
 ――いや、きっとこれは夢だ。夢だ。夢に違いない! 夢なら早く醒めてくれっ!!
 高丸は胸中で喚いた。
 思考回路がショートする。
 急激に意識が途絶えた――



     「ENDING」へ続く



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2009.08.27 / Top↑
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