ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 目の前で園田充が倒れた。
「園田っ!?」
 徳川直杉は、無意識のうちに悲痛な叫びをあげていた。
 ――園田を助けなければ。
 充の傍へ駆け寄ろうとした直杉の行く手を、素早く水妖が遮る。
 青く輝く物体を認識した瞬間、直杉の両眼に苛烈な光が宿った。
「私の――邪魔をするなっ!」
 直杉は胸に芽生えた怒りを手刀に乗せて繰り出した。
 凄まじい勢いに、手に巻かれていたハンカチが解け散る。
 水平に薙いだ手刀は、鮮やかに水妖の身体を二分した。
 それを確認するなり、直杉は敏捷に床を蹴った。
「しっかりしろ、園田!」
 呼びかけるが、充からの応えはない。
 代わりに充に覆い被さっていた水妖が、少女のあどけない顔を直杉へと向けた。
 無感情な眼差しが直杉を射抜く。
「うっ……」
 突如として、心臓を鷲掴みにされような衝撃が走った。
 ガクンと膝が折れ、直杉はその場に頽れた。
 金縛りに遭ったように身体が動かない。
 水妖の妖力のせいなのだろう。
 動けなくなった直杉の右手に、冷たい感触が忍び寄る。
 直杉は、まだ自由の利く目を動かして右手を見遣った。
 青白い物体が右手首に絡みついている。
 生徒玄関を手刀で打ち砕こうとした際に生じた傷――その傷口を水妖がゾッとするほど愛しげに撫でていた。
 程なくして、水妖が細い触手を傷口へと伸ばす。
 微かな痛みが右手に走った。
「何……をっ……」
 傷口から水妖の分身が体内に注入されたのを見て、直杉は目を瞠った。
 右手が熱い。
 異様な熱は物凄いスピードで血管を駆け巡り、全身に到達した。
 体内の血液がザワザワと騒ぐ。
 身を焦がすような熱に耐えきれず、直杉は床に突っ伏した。
 ――私は……死ぬのか?
 全身が怠い。
 意識が薄れ始めてゆく。
 ――私が死んだら……誰が徳川の家を継ぐというのだ。
 直杉は歯を食いしばりながら、朦朧とする意識と闘った。
 しかし身体を苛む熱は、思考を容赦なく蝕んでゆく。
 ――誰か代わりがいるなら、教えてくれ!
 胸中で絶叫した直後、直杉の意識は闇へと向かって急激に失墜した。

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2009.06.01 / Top↑
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