ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「発作だわ」
 モリガンが表情を引き締める。
「ああっ……いや……嫌だっ! 助けて……誰か助けてっ!!」
 苦悶の叫びが続く。
 少年の細い右腕が何かを求めて宙を彷徨った。
「リガ!」
 ガウェインは慌ててベッドへ駆け寄り、少年の手を掴んだ。
 少年――リガが必死にガウェインの手を握り返してくる。彼の身体は弓なりに仰け反り、更に右半身が激しい痙攣を引き起こしていた。
「しっかりしろ」
 リガの指が、常人では考えられないほどの強い力でガウェインの手を握り締める。その痛みに耐えながら、ガウェインは残る一方の手でリガの髪を撫でた。
「嫌だ……助けて! 誰か……ルナを――家族を――僕を助けてっ!」
「大丈夫だ。ランスロットはここにはいない。だから、もう苦しむことはないんだ。――オイ、どうにかならないのかよ?」
 ガウェインは縋るようにモリガンを見遣った。
「うーん、どうにかって言われてもねえ……。ボディの修復はちゃんとしたわよ。でも、この発作だけは誰にもどうにもできないわ」
 モリガンは渋い表情でガウェインを一瞥し、掌をリガの右肩に添えた。リガの右肩から腕にかけては白い包帯が幾重にも巻きつけられている。
「死ぬのか?」
「そんな不吉なこと口走らないの」
「なあ、死ぬのかよ? まだ十五歳だぞ」 
「ガヴィ、やめなさい」
「たった十五年しか生きていない子供なんだぞ! なのに家族を奪われ、右半身を奪われ、未来を奪われ、今また生命を奪われるなんて――」
「ガウェイン、あたしは『やめろ』と言ったはずよ」
 モリガンが激しい口調で叱咤する。
「あんたが取り乱すから、リガが怯えちゃったじゃない」
 モリガンに指摘されて、ガウェインはリガの発作が治まっている事実に初めて気がづいた。
 リガの涙に濡れた蒼い瞳が、じっと自分を見つめている。
「僕は……もう子供じゃないよ」
 リガの顔に弱々しい微笑が浮かぶ。
 その笑顔を見た瞬間、ガウェインの胸に鋭利な痛みが走った。
「悪い。おまえを傷つけるつもりはなかったんだ」
「平気だよ。発作なんて、いつものことなんだから心配しないで」
「そんなの無理に決まってるだろ。オレは、いつだってリガのことを一番に考えてる」
「本当に心配性だね。……じゃあ、もう少し傍にいて。ガヴィがいてくれたら、きっとすぐに良くなる」
 苦しげに囁き、リガが静かに瞼を閉ざす。
「ああ、ずっと傍にいる」
 ガウェインはリガの手を握ったまま大きく頷いた。
 だが、リガからの返事はない。再び意識を失ってしまったのだろう。
「おバカさん。病人に気を遣わせて、どうするのよ」
 モリガンが呆れ顔でガウェインを睨む。
 まったくその通りだったので、ガウェインには返す言葉もなかった。
「不憫よね。生身の部分とサイボーグ部分のネットワークが巧く働かないなんて。それを解っていても、あたしたちにはどうしようもない。もどかしいわね。せめてミユキが生きていてくれたら……」
 モリガンが溜息混じりの言葉を吐き出す。
 ガウェインはリガの顔を見つめ、きつく唇を噛み締めた。

 

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2009.08.30 / Top↑
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