ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「Xナンバーは、あんたのせいでみんな死んだ。大火災の際、ミユキを助けようと地上へ向かったYナンバーは炎に呑まれて激減した。今、生き残ってるのは、オレとモリガンとガラハッドだけだ」
「たったの三人か……」
 ランスロットが悄然と呟く。
 その表情は、更に苦悩に満ちたものへと変化した。
「どうしてミユキを殺した?」
「さっきも言ったが――ミユキは自殺だ」
 責め立てる口調で訊ねると、ランスロットは大儀そうに溜息をついた。
「ミユキの死因は自殺なんだよ、ガヴィ」
「あんたの言葉は信じられない」
 ガウェインはランスロットを睨めつけ、喉の奥から声を絞り出した。
「ミユキはあんたたちに殺されたんだ」
「どうして、俺たちがミユキを殺さなければならない? 俺は彼を尊敬し、愛していた。ミユキは自殺だ!」
 思いがけず、ランスロットが激しく反論してくる。
「じゃあ、何でミユキは自殺したんだよ? あんたは理由を知ってるのか」
「多分、知っている。だが、それはあくまでもミユキ個人の問題だ。彼はプライベートな問題で苦悩し、自ら死を選んだ。おまえたちには関係ない」
「関係ない? この期に及んで、よくもそんなことが言えるな」
 無神経な一言に、ガウェインは眦を吊り上げた。
 ランスロットの胸倉を掴み、激しく彼を揺さぶる。
 抑えきれない怒りが全身を満たしていた。
「オレたちは、あんたらに創られた存在だ。なのに、無関係だって言うのかよ? 随分、勝手だよな。勝手に拾って、勝手に研究して、勝手に改造して、勝手に捨てて……!」
 ガウェインは心に溜まった憤懣を一気にぶちまけた。
 すると、ランスロットが急に目を瞠った。
 彼は食い入るようにガウェインを凝視し、しばしの沈黙の後、泣き笑いの表情を浮かべるのだ。
「ガウェイン、どうか泣かないでくれ」
 ランスロットの片手が頬に伸びてくる。
 彼の手を避けるようにガウェインは顔を背けた。その拍子に、双眸から零れ落ちた液体が頬を伝う。
「泣いてない。涙なんか出るはずがない。オレの眼は贋物だ」
「それは紛れもなく涙だよ。人工涙腺から分泌される保護液の量は、感情と連動するようになっている。エレインが、そうプログラムしてくれた」
「違う、こんなのは涙じゃない! 義眼の調子が悪いだけだ」
「……ガヴィ、ミユキは自殺だ。これ以上の詮索はするな」
 ランスロットの指が流れ落ちる液体をそっと拭う。
「できることなら、今すぐアヴィリオンを出なさい。地下に長く留まっていてはいけない」
「オレたちが用済みになったから捨てたんだろ。なのに、何でまだオレたちを愛してるような言葉を吐くんだよ?」
 ガウェインは乱暴にランスロットの手を振り払った。
「捨てたくて捨てたわけじゃない。無論、おまえたちが邪魔になったとか、要らなくなったとか――そういう理由でアヴィリオンを出たわけじゃない」
「Xナンバーを殺したあんたが、それを言うのかよ?」
「あれは……事故だった」
「事故? あれは殺戮だ。マーリンを服用したあんたは錯乱し、手当たり次第にXナンバーを殺した。Xナンバーは敬愛する博士の乱心に戸惑い、対処する術もなく、あんたの餌食になったんだ。マーリンの幻覚に踊らされていたのかもしれないけど、殺したのは事実だ。薬なんかに責任を転嫁するなよ」
「確かに、俺はマーリンを服用していた。そして、Xナンバーを殺した」
「マーリンは悪魔の薬だ」
「そんなことは熟知している。アレを製薬したのは俺だ。ロフラゼプ酸エチルに酷似した新成分とバルビツール酸を核として特殊処方した――新薬だ」
「オレには医学的なことは解らない。けど、あんたが生み出した新薬には、既存のドラッグを遙かに上回る副作用がある」
「アレは、元々おまえたちのために処方した特異な薬だ。精神安定、鎮静、鎮痛――全てを兼ね備えた魔法の薬だ。しかし――」
 溜息混じりにランスロットは呟く。表情には憔悴の色が濃い。
「常人が使用すれば、一転して悪魔の薬へと変貌を遂げる。普通の人間が服用すれば、幻覚・幻聴・錯乱・刺激興奮・依存性・狂暴性――様々な激しい副作用が出る」
「――で、あんたみたいな殺人鬼になるってわけだ。どうして、あれを表の世界へ流出させた? 頻発している薬物乱用殺傷事件は、マーリンが原因なんだろ」
「事件はマーリンによるものだろう。だが、俺は一切関与していない」
「嘘つくなよ。あんたが処方箋を表の世界に流したんだろ」
「薬箋は存在しない。マーリンに関する全てのデータは、アヴィリオンを出る時に処分した。あるとすれば、この俺の頭の中だけだ。しかし、誓って俺は事件に関係していない」
「じゃあ、誰がマーリンを一般人に与えたんだよ。他の博士たちか?」
 再びランスロットの胸倉を強く掴み、ガウェインは彼に迫った。
 マーリンの生みの親はランスロットだ。彼以外に処方箋なしでマーリンを製薬できる人間など存在するはずがない。
 だが、当の本人は事件との関わりを頑なに否定している。
 では、一体誰がマーリンをアヴィリオンから持ち出したのだろうか。
「他の博士でもないだろう。彼らは製薬法を知らない」
「それも嘘だろ。あんたたちの仕業としか考えられない。マーリンを表世界にバラ撒くために、アヴィリオンから逃げ出したんだろ」
「嘘など述べてないし、そんな馬鹿な真似はしない」
「だったら、何のためにアヴィリオンを捨てた? 何故、ミユキは自殺した? どうして、あんたはリガにあんな酷いことをしたんだよ!?」
 ガウェインが言葉を捲し立てると、ランスロットは眉根を寄せて首を傾いだ。
「リガ? それは……何のことだ?」
「とぼけるな。アヴィリオンを脱走した日、あんたが身体を切り刻んだ少年だよ」
 激しい怒りと憎悪がガウェインを支配する。
 二ヶ月前の惨劇とリガの痛々しい姿が脳裏をよぎった。



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2009.09.02 / Top↑
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