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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Tue
2009.06.02[09:02]
――調和・平穏・安泰・光・夢・希望
   天界とは、常に輝きに満ちた世界で在らねばならない
   過去・現在・そして未来永劫……

   だが、時として我らは戦わねばならない
   それがどんなに虚しく悲壮な戦いであっても

   何が故に?
   答えなど出るはずがない――





天界統治者・天王居城――天空城

 
 天空城の一角――大きく張り出した露台に一人の青年の姿があった。
 手摺りに肘をつき、組んだ両手の上に憂いた顔を載せている。
 時折そよぐ風が青年の長い銀髪をさらう。
 物憂げな蒼い瞳が印象的な美しい青年だ。
「兄者、兄者……! どうなされた? 随分と浮かない顔をされている」
 不意に、背後で自分を呼ぶ声が響く。
 銀髪の青年――彩雅(さいが)は、驚いて振り返った。
 碧い髪と瞳の女性が立っている。
 その位置からでは彩雅の表情など見えるはずもないのに、彼女には不思議と手に取るように解るらしい。彩雅の顔色も心情も。
 自分と同じ顔をした女性を見つめ、彩雅は柔らかい笑みを湛えた。
 双子の妹――水鏡(みかがみ)だ。
「久し振りだね、水鏡。何故、天空城へ?」
 彩雅は静かに問いかける。
 彩雅と水鏡は、共に天王を守護する《七天》の一人であった。
 氷天・水天・炎天・雷天・風天・空天・地天――七人の神のことを総じてそう呼ぶのだ。
 彼らの城は、天界統治者である天王の居城・天空城を護るように配置されていた。
 北に氷天の氷輪城。
 南に水天の水滸城。
 北東に風天の風凪城。
 南東に雷天の黎光城。
 北西に地天の善地城。
 南西に炎天の煌緋城。
 そして、天空城の真上に、宙に浮く空天の鳳凰城。
 天界では滅多に戦は起こらないが、万が一戦乱が勃発した場合に備えて、それぞれの城に七天が配置されているのだ。無論、天王を守護するためである。
 彩雅は氷天、水鏡は水天の任を負っていた。
「私は天王様に召されたのだが……」
 水鏡が兄の隣に並ぶ。
「まだお逢いしていないのか?」
「逢ってない。兄者の姿を見かけたから、つい寄り道をしてしまった。――兄者はもう逢われたのか?」
「いや、私もまだだよ」
「そういえば、先ほど雷天と空天を見かけたな」
 ふと、思い出しように水鏡が告げる。
 それを聞いた彩雅の眉根が微かに寄せられた。
「雷天と空天も? 水天であるおまえと氷天である私を入れて、七天のうち四人までもが天王様に呼び出されたというのか?」
 怪訝そうに首を捻る彩雅に、水鏡は苦笑を向けた。
「さあ? 私は久し振りに兄者に逢えると思ったから入城したのだし……。だが、聞くところによると地天にも声がかかったらしい。空天が入城すると聞いて見合わせたそうだが」
「ああ、あの二人は昔から仲が悪いからな。どちらかと言えば、地天が一方的に嫌っているように見えるけれど……。まあ、それは措くとして、我らに一斉に声がかかるとは何が起こったものか? 天王様にお逢いしなければな」
 彩雅は深い溜息を落とすと、手摺りから離れた。
 彩雅と水鏡が連れ立って露台を出ようとしたその時、
「――どうやら、七天全員に声がかかったようだな」
 二人の前に一人の少女が姿を現した。



 
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